この話に使用したカードデータは、『遊戯王カードWiki』・『遊戯王5D’sワールド』のサイトを参考にしました。


※アニメオリジナルカードには、カード名の前に☆を付けています。ただし小説の進行上、カードのデータをいくつか端折っている所があります。






 客星は燃える。最bの輝きと共に。
 すべての風の終着点へと落つる時、世界を照らすは、導くは、



 愛おしき、奇跡の声也。









それは、真昼の地上に浮かぶ星








『牛尾先輩大変です!! 今管制から連絡が入ったんですが現在あのジャック・アトラスがこのネオ童実野シティで決闘してるって、しかも相手は、一年前に死んだ筈の不動遊星だと』
「ナイスタイミングだでかした!! 今度好きなもん奢ってやるからな!!」
『は?』
「いいから急いで彼等の決闘しているレーンを教えなさい!!」
『そそその声は狭霧「いいから早く!!」は、はいぃ!! えっと使用中のデュエルレーンは●●−△▼、あのWRGPスタート地点を含みます!!』



 まるで決闘の神が、彼等二人の戦いの目撃者を募り、導いている様だった。

 ジャックとyuuseiの決闘が開始された事を知ったクロウ達はタイミング良く牛尾の元へ入った情報に飛び付き、お斎会場が出しているバスを借り、かつて激闘が繰り広げられたWRGP開催地目指して大急ぎで向かった。




 そして到着し、たくさんの足音が響く廊下を抜けた先……チームスタッフ達が待機するピットの前に敷かれ青空へとまた繋がっていくレーンを、高速で駆け抜ける紅白のD・ホイール。


「うそ」
「あれはっ」
 呆然と呟いたのは誰か。弾かれる様に声が詰まったのは誰か。情報で聞いていても俄かには信じ難かったその光景は一瞬で遠ざかり、けれども彼等へ強烈に現実を刻みこむ。レッド・デーモンズ・ドラゴンと共に疾走する白のD・ホイール……その前を駆ける、ジャンク・アーチャーとロード・ウォリアーを従える赤いD・ホイールを!! それに跨り操縦する者の姿を!!



 ブゥン。
 誰もかれも二の句が告げない中、ピットに備えられたウィンドウが起動し現在の彼等の決闘が映し出される。慌てて駆け寄れば、場内アナウンスからイェーガーの声が響き渡る。


『皆さん。いらぬ混雑と介入を避ける為、彼等の決闘を表示させるのは両チームのピットに設置された液晶のみとさせていただきました。見にくいやもしれませんが、一瞬も逃す事無く最後まで見届けましょう』

 現在戦っているのは、今や世界の王者であるジャックと、死んだ筈の遊星。いや、yuusei。
 かつてWRGP開催時にも使用されていたレーン頭上のスフィア型メインモニターを起動させれば、今ここにいる者達だけでなく事情を知らぬ一般市民も気付くだろう。しかもその決闘を見届ける者達もまた今世界を湧かせているプロばかりとなれば、興奮した者達によって生まれる大騒動は避けられない。それはこれ以上無く無粋であり、二人の決闘者に対しての侮辱にもなろう。会場に到着したと同時に放送席へと一人走ったイェーガーの敬意を表した行動に抗議する者はなく、皆そのまま二手に分かれ、液晶の中の彼等の決闘を見届ける観客となった。





「手札のフレア・リゾネーター(☆3)を墓地に送り、パワー・ジャイアント(☆6→3)を特殊召喚する。この効果で特殊召喚した場合、墓地に送ったモンスターのレベル分このカードのレベルは下がる!!」

パワー・ジャイアント
地属性 岩石族・効果 ☆6 攻2200/守0
このカードは手札のレベル4以下のモンスター1体を墓地へ送り、手札から特殊召喚する事ができる。この方法で特殊召喚した場合、手札から墓地へ送ったモンスターのレベルの数だけこのカードのレベルを下げる。
また、このカードが戦闘を行う場合、そのダメージステップ終了時まで自分が受ける効果ダメージを0にする。




「さらに、ダーク・バグ(☆1)を通常召喚! この効果により、先程墓地に送ったフレア・リゾネーター(3)を攻撃表示で復活させる。そして罠発動、強化蘇生!! レベルを一つ上げ、インフルーエンス・ドラゴン(3→4)を特殊召喚!!」

ダーク・バグ
闇属性 昆虫族・効果 ☆1 攻100/守100
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル3のチューナー1体を選択して特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

フレア・リゾネーター
炎属性 悪魔族・チューナー ☆3 攻300/守1300
このカードをシンクロ素材としたシンクロモンスターの攻撃力は300ポイントアップする。

強化蘇生
永続罠
自分の墓地からレベル4以下のモンスター1体を選択して特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターのレベルは1つ上がり、攻撃力・守備力は100ポイントアップする。
そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

インフルーエンス・ドラゴン
風属性 ドラゴン族・チューナー ☆3 攻300/守 900
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する事ができる。選択したモンスターはエンドフェイズ時までドラゴン族になる。




「インフルーエンス・ドラゴンの効果により、パワー・ジャイアントをドラゴン族に変更! レベル3のパワー・ジャイアントに、レベル4のインフルーエンス・ドラゴンをチューニング!! 王者の叫びがこだまする! 勝利の鉄槌よ、大地を砕け! シンクロ召喚! 羽ばたけ、エクスプロード・ウィング・ドラゴン!!」

エクスプロード・ウィング・ドラゴン
闇属性 ドラゴン族・シンクロ/効果 ☆7 攻2400/守1600
チューナー+チューナー以外のドラゴン族モンスター1体以上
このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ、フィールド上に表側表示で存在するモンスターとこのカードが戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを相手ライフに与える事ができる。





「ジャックの場に新たなドラゴンが召喚された!」
「これでyuuseiの場に存在する二体のモンスターを全滅させる事が「まだだ!!」」
「これで終わりではない!! さらに相手フィールド上にシンクロモンスターが存在する場合、手札からミラー・リゾネーター(☆1)を特殊召喚出来る!! そしてミラー・リゾネーターのレベルは、相手フィールド上に存在するシンクロモンスター1体のレベルと同じになる! 俺はジャンク・アーチャー(7)を選択!! よってミラー・リゾネーターのレベルは7となる!!」

☆ミラー・リゾネーター
光属性 悪魔族・チューナー ☆1 攻0/守0
相手フィールド上にシンクロモンスターが存在する場合に召喚する事ができる。このカードのレベルは、相手フィールド上に存在するシンクロモンスター1体のレベルと同じになる。



「レベル1のダーク・バグに、レベル7となったミラー・リゾネーターをチューニング!! 王者の決断、今赤く滾る炎を宿す、真紅の刃となる! 熱き波濤(はとう)を超え、現れよ! シンクロ召喚! 炎の鬼神、クリムゾン・ブレーダー!!」

クリムゾン・ブレーダー(OCG効果)
炎属性 戦士族・シンクロ/効果 ☆8 攻2800/守2600
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。次の相手ターン、相手はレベル5以上のモンスターを召喚・特殊召喚できない。




「さらに手札からSp−ハーフ・シーズを発動する!! この効果によって、貴様の場のロード・ウォリアー(攻3000)の攻撃力を半分にし、その数値1500ポイントのライフを回復する!」

☆Sp−ハーフ・シーズ
通常魔法
自分用スピードカウンターが3つ以上ある場合に発動する事ができる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力を半分にし、ダウンした攻撃力の数値だけ自分のライフポイントを回復する。



「そして自分の場にレッド・デーモンズが存在する時、レッド・ノヴァ(☆1)は手札から特殊召喚出来る!!」

☆レッド・ノヴァ
炎属性 天使族・チューナー ☆1 攻0/守0
自分フィールド上に「レッド・デーモンズ・ドラゴン」が存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。





「さあバトルと行こう!! まずはエクスプロード・ウィング・ドラゴン(攻2400)で、ジャンク・アーチャー(2300)を攻撃!! キング・ストーム!!」
「手札のシンクロ・ビリーバーの効果発動!! エクスプロード・ウィング・ドラゴンの戦闘を無効にし、このカードを守備表示で特殊召喚する!!」

☆シンクロ・ビリーバー
光属性 天使族・効果 ☆1 攻100/守100
自分フィールド上に存在するシンクロモンスター1体が相手モンスターの攻撃対象になった時、その戦闘を無効にして手札のこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。




「クリムゾン・ブレーダー(攻2800)でロード・ウォリアー(1500)を攻撃! レッドマーダー!!」
「墓地のガード・マスターの効果発動!! 墓地のこのカードを除外し、攻撃対象となったロード・ウォリアーを守備表示にする!!」

☆ガード・マスター
地属性 戦士族・効果 ☆4 攻0/守1700
このカードが自分の墓地に存在する場合、相手モンスター1体が自分フィールド上に存在する表側攻撃表示モンスター1体を攻撃対象に選択した時に発動する事ができる。自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、攻撃対象になったモンスター1体の表示形式を表側守備表示に変更する事ができる。
また、この効果の対象になったモンスター1体は、このターン戦闘では破壊されない。



「クリムゾン・ブレーダーの効果は、モンスターを戦闘破壊して墓地に送らなきゃ発動出来ない。ガード・マスターの効果により戦闘破壊が出来なくなった事でその効果は不発に終わった」
「ああ。だがこれで」
「愚かな! 我がレッド・デーモンズの前に壁モンスターを増やす等無意味な事だと教えてくれる!! レッド・デーモンズ・ドラゴン(攻3000)でロード・ウォリアー(守1500)を攻撃!!




そしてこの瞬間、レッド・デーモンズ・ドラゴンの効果により、貴様の場の守備表示モンスターはすべて破壊される!! 王者の一喝にひれ伏せ! デモン・メテオ!!」



「これでyuuseiのモンスターはジャンク・アーチャー以外全滅する」
「ああ、そしてチューナーを二体呼び出してるってことは、おそらくジャックのあの伏せカードは」



「……ふっ」
「何がおかしい!!」
「この時を待っていた! 罠発動、スターライト・ロード!! この効果により二体以上のモンスターを破壊しようとしたレッド・デーモンズ・ドラゴンの効果を無効にし、破壊する!!」

スターライト・ロード
通常罠
(1):自分フィールドのカードを2枚以上破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時に発動できる。その効果を無効にし破壊する。その後、「スターダスト・ドラゴン」1体をエクストラデッキから特殊召喚できる。




 レッド・デーモンズ・ドラゴンが攻撃した守備表示のロード・ウォリアーは、レッド・デーモンズの攻撃力が上回っていようと戦闘破壊ではなくデモン・メテオによる効果破壊扱いとなる。そしてyuuseiのフィールドにいる守備表示モンスターは、ロード・ウォリアーとシンクロ・ビリーバーの二体。よってスターライト・ロードの発動は成立し、その効果によってレッド・デーモンズが破壊され、





「飛翔せよ! スターダスト・ドラゴン!!」

 カードから溢れ出る光の中から……光差す道から、スターダスト・ドラゴンが高らかに鳴きながらフィールドへと舞い降りた。





スターダスト・ドラゴン
風属性 ドラゴン族・シンクロ/効果 ☆8 攻2500/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「フィールドのカードを破壊する効果」を持つ魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースする事でその発動を無効にし破壊する。この効果を適用したターンのエンドフェイズ時、この効果を発動するためにリリースされ墓地に存在するこのカードを、自分フィールド上に特殊召喚する事が出来る。




「スターダスト……」
 その名を呼んだのは、yuuseiでもあり、ジャックでもあり、この決闘を見届けている者達のものでもあった。だがそこに含まれている想いは、感情は、どれもまったく一致しなかった。
 ゆっくりとスターダストが、自らを呼び出した主を見やる。その姿を写した金色の眼は見開かれ……もう一度高らかに鳴いてyuuseiの前へと移動した。自分自身で選んだ、【本当の主】を守るかのように。


「スターダスト……」
「さぁジャック、次はどうする」
「っ、フレア・リゾネーター(攻300)で、シンクロ・ビリーバー(守100)を攻撃! カードを二枚伏せ、ターンエンドだ!!」
「俺のターン、ドロー!!」





「……凄い」
 誰かがぽつりと零したそれは、自分の口から零れたのかもしれない。


 ジャックとyuusei。二人の決闘はまさに、烈々たる激闘だった。

 息吐く間も無く、繰り返される攻防。罠の応酬。風の中で巻き上がり続ける魔法の渦。プロでもプロじゃなくても分かる。そこで繰り広げられている闘いはまさに、二人だけの世界。二人だけがすべての世界。時間も常識も何もかも、あらゆる介入者をけして許さない、頂点に立つ事を許されたレベルを有する者同士の戦い。


 そしてまさに……まさにあの日の、いいやあの日以上の激戦。自分達がこの街を旅立つ決意を固めた【あの日の彼】よりもさらに成長と進化を遂げた【彼】が、今まさに再びジャックとあいまみえているという夢幻を可視化させたような決闘。


 だからこそ……



「……情けねぇ」
 ぽつり、と零したその言葉を、拾ったのはアキと龍可。

「こんなにもすげぇ決闘が出来るのに……どうしてあの時、気付いてやれなかったんだ」
 呟いたクロウが、ギリッと奥歯を噛みしめる。その双眸に滲んでいるのは、深い後悔。こんなにも凄い決闘を前にしてどうして後悔しているのか分からなくて、どういうこと? と前後の内容が繋がっていない独り言に対してと共に龍可が尋ねれば、彼は現在ターンプレイヤーであるyuuseiから視線を逸らさないまま目を細める。



「Sp−エンジェル・バトンを発動! スピードカウンターが二つ以上ある時、デッキからカードを二枚ドローし、手札を一枚墓地に送る!!」


「今yuuseiが使っているデッキは、俺が龍亞に貸した遊星のデッキにカードを入れて組み直したものだ」
「「!!」」
「ジャックとyuuseiの決闘の為に、龍亞が色々と奔走してるのには気付いていた。だから今までの奴等の様に、ジャックもまた遊星のデッキを見る事で画面からだけじゃ分からないイメージを練りながら対策を考える気だと思った。アキやマーサから服やD・ホイールを借りたのも、遊星の事を考えて遊星ならどう戦うかをより深くイメージする為かって」
「! クロウ、それって」



「ジャンク・アーチャーの効果発動! この効果により、エンドフェイズまでクリムゾン・ブレーダーを除外する!! ディメンジョン・シュート!!」


「でも、そんな訳無かった。ジャックはそんな繊細なやり方する奴じゃねぇ。龍亞が協力していたのはジャックじゃなくてyuuseiだった。あいつはyuuseiに利用されるままに、俺達に頭を下げて決闘をして、遊星の残していった遺品を集めたんだ。すべてはこの日ジャックと奴の決闘を、ジャックと、遊星の決闘として、今この場で実現させる為に」
「嘘……じゃあ、今彼が着ている服は」
「彼が使っている、決闘盤は……D・ホイールは」
「だから龍亞は、この場にいないんだ。……いれないんだ。それをジャックも気付いてる。あいつ、なんだかんだ言いながら、龍亞の事大事に想ってるからな」



「さらに、ロード・ウォリアーのレベルを1つ下げる事で、墓地からレベル・スティーラーを特殊召喚!!」


 遊星と同じデッキを使っても、遊星になる事は出来ない。
 あの時の自分の言葉を、龍亞はどのような思いで聞いていたのだろう。



『お前は差し詰め、その手伝いの為にパシらされてるって所か』
『……それは』

 あの時もし彼の返事を止めていなかったら、彼は何と言うつもりだったのだろう。



「龍亞は遊星のデッキを借りる為に俺と決闘をした……あいつの決闘には、絶対に譲れねぇ、大事なもんの為に戦ってるって想いがあった。だから俺はデッキを託した」
「……私も、私もそう。龍亞の決闘の中に、真っすぐで強い覚悟を感じた。どうしてデッキとかじゃなくて服をと思ったけど、預けても大丈夫だと思ったから渡した。けど」

 けれど結果は、こうなった。何も事情を知らなければ、察せなければ、龍亞の行いは自分達と何より遊星への、酷い裏切り行為に見えただろう。だがクロウもアキも、そこまで疎くはない。口から出た言葉のニュアンスだけ拾えば誤解を招くだろうが、彼等は龍亞を責めている訳ではないし責める理由もない。


 ただ、一つ。一つだけ、どうして龍亞がyuuseiの為にあんなまっすぐな覚悟をもって自分達に挑んでこれたのかが、分からなかった。遊星に匹敵する程の凄い決闘戦術(タクティクス)を駆使すると言えど、龍亞にとっても、yuuseiは遊星の名を騙る偽者には違いない筈なのに。



「どうして龍亞は、yuuseiの為にあんな必死になれたんだ」
「……倒してほしかったから、じゃないかな」
「! 太郎?」

 クロウ達と同じピット側で闘いを見ながら、クロウの葛藤を聞いていた太郎がクロウへ視線を向ける。


「倒してほしかったからって」
「勿論、ジャックをじゃないよ。ジャックに、yuuseiをだ」
「ジャックに、yuuseiを……」
「龍亞らしいかと言えば、らしくないけど……クロウの話と考えた事が本当だとすれば、そう思ってもおかしくないんじゃないかな」
「確かに龍亞って、遊星の事大好きだったもんね。そんな龍亞が遊星の偽者が現れたなんて聞いたら、絶対許せないと思うだろうし」
「だがあいつには、yuuseiを倒せる力が無かった。太郎はともかく、あんたや向こうで見てるチームリーダー達まで倒す位の強さを持っているんだ。その位言われなくても分かるだろうさ。だがジャック・アトラスなら」

 太郎の推測に、吉蔵と甚兵衛が同調する様に言葉を続ける。そして太郎が、甚兵衛の言葉に頷いて引き継ぐ。



「そう。ジャックなら、yuuseiを倒せるかもしれないと思った。おそらく龍亞は、ジャックにyuuseiを倒してほしかったんだ。……どうしてオンラインデュエルじゃなくて現実のライディングデュエルをする事になったのかは分からないけど、その為に龍亞はyuuseiに協力したんじゃないかな。……まるでチームデュエルの様に、ジャックに自分の願いを繋ぐ為に」
「そんな……」

 太郎達の出した結論は、あくまで空想の上に成り立つ推測にすぎない。だがそれに正否を唱えられるのはただ一人であり、その者がいないこの場においてはそれが限りなく真実に等しい言霊となる。


 そしておそらく、ジャックも自分達と同じ推測へと行き着いたのだろう。先程電話の向こうで聞こえた言葉だけじゃない。王者としての言葉を紡ぐ口ほどに、いや口以上に、王者と呼ぶにはあまりにも烈しく鋭すぎる怒りを露わにした眼光が、隠しもせずその続きを語る。いや叫び続けている。


「ロード・ウォリアーを除外し、異次元の精霊を特殊召喚!!」
 その激情の矛先にいるのは、yuuseiただ一人だけ。




 龍可が携帯を取り出して、龍亞へと掛ける。だが先程からずっと繋がらない電話は、今度もまた無機質なアナウンスを流すばかりだった。でも今の話を聞いた以上何もしないでいる事は出来そうになかった。だから彼女は、こうメールを打って送信した。


Title:大丈夫よ
本文:龍亞。貴方は悪くない。誰も責めたりしない。私も、皆も、貴方の味方よ。龍亞の事大事だから。大好きだから。
ねぇ龍亞、教えて。貴方は今どこに


「どこにいるのよ、龍亞」


 ……送られたメールを彼が見るのは、すべてが終わってからになるだろう。だって今、彼女達と彼を繋いでいるものは何もない。繋がらなければ、伝わらないのだから。電波も、彼女達の想いも、






 真実も。


 彼の……龍亞の、本当の想いすらも。






『……』
 龍亞はずっと、yuuseiの……遊星の後ろで、半透明状の姿で追いかけながら、一番近い場所で二人の決闘を見続けていた。決闘を見ている他の仲間達の声も耳に届かず、ただひたすら自らの目で遊星の手札と、二人の一挙手一投足を傍観し続けて……未だ答えを、出せずにいた。


 お前に取り憑いていられるのも、あと少しの様だ。
 お前が応えてくれなくても、この気持ちだけは先に伝えておきたかった。最後の戦いに、全力で臨める様に。
 龍亞。好きだ。お前を好きになって、お前と一年一緒にいれて、幸せだった。


 俺は一言も、『いつまでも待つ』なんて言った覚えはない。



『……っ』
 胸の中を何度も掻き毟る、遊星の言葉。この決闘が終わったら、いいや下手すれば終わる前に、遊星は自分の元から消えてしまうかもしれない。いや、消えてしてしまう。成仏してしまう。死者がこの世にいられるリミットなんて死んだ事のない龍亞には分かる筈もなくて、だからこそ遊星の言葉を鵜呑みにする他なく残された時間で必死に自分が出すべき答えを模索していた。


『(いや違う。答えはもう、出ている)』
 遊星に対する自分の気持ちなら、もうずっと前に出ていた(、、、、、、、、、、、)。オレも大人になって、そこまで鈍感じゃなくなった。むしろわざと、鈍感で居続けた。もっともっと、敏感で、臆病な自分が邪魔をして、今になってもまだ自分がどうすべきか答えられなくて、だからこそ遊星に、ずっと応えられないままで。




「レベル1のレベル・スティーラーに、レベル1の異次元の精霊をチューニング! 集いし願いが新たな速度の地平へ誘う。光さす道となれ! シンクロ召喚!! 希望の力、シンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロン!! フォーミュラ・シンクロンの効果により、一枚カードをドローする!!」

フォーミュラ・シンクロン
光属性 機械族・シンクロ/チューナー ☆2 攻200/守1500
チューナー+チューナー以外のモンスター1体
このカードがシンクロ召喚に成功した時に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。また、相手のメインフェイズ時、自分フィールドに表側表示で存在するこのカードをシンクロ素材としてシンクロ召喚をする事ができる。



「馬鹿な! フォーミュラ・シンクロンだと!?」
「いや、フォーミュラ・シンクロンは元々デッキに入っていた。だから召喚してもおかしくはねぇ」
「だがこれでレベル2のシンクロチューナーと、スターダストが揃った」
「という事は……いやだが……!」




「レベル8のスターダスト・ドラゴンに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニン、っ!?」
『あっ!!』

 突然、遊星のD・ホイールが大きく蛇行し、失速する。アクセルシンクロ召喚をしようとした瞬間、アクセルを握っていた遊星の手から半透明状の物が浮かび上がった。その事が原因なのかバランスが崩れかけて、D・ホイールが大きくぐらつく。


「くっ!」
 半透明状のナニカが浮かび上がったと同時に、握力を失った様に右手が開いていく。遊星が意識を集中させるとそのナニカは右手に戻り、握力も取り戻された。でも、今のって



『遊星、今の』
「……どうやら、本当にもう時間が無いらしいな」
『っ!!』

 D・ホイールの画面に表示された時間は、決闘開始から二十分程経っていた。この一ヶ月で遊星と交代出来る時間を延ばせて、まだあと十分は大丈夫な筈なのに。いやそもそも、時間切れでオレに戻る時はいつも半強制的に遊星の意識が追い出されて交代していた。なのに今オレの意識は遊星の隣にいるままで、そして、そして今、オレの体(ゆうせい)の右手から浮かび上がったそれは、



 紛れもなく、何度も見てきた遊星の右手だった(、、、、、、、、)……!!



『どうして、どうして今なの、まだジャックとの決闘は終わってないじゃん! まだ未練は残ってるのに、どうして』
「おそらく、クリアマインドだ」
『え』
「(クリアマインドは、加速する世界でしか見出せない、揺るがなき境地。そこに到達する為には、迷いがあってはいけない。……未練も、執着も、すべて捨てなければ辿りつけない)」
『!! それ、て』
「(アクセルシンクロを使う為にはクリアマインドが必要だ。だからこそ今、未練も執着も忘れかけた俺の魂は体から離れかけ)、っ!」

 今度は右足が分離し掛け、遊星の焦りの感情が強く伝わる。だけど……彼はもう、もう、それについての答えを出してしまっている。



「っ、はぁ、まだだ。ジャックはアクセルシンクロ無しで、倒せる相手じゃない」
『だ、だけど、アクセルシンクロをしたら、遊星は、遊星はっ!』
「! 龍亞……やっと、泣いてくれたな」
『っ? なにが』
「お前の返事を待つだけの余裕は、もう無いみたいだ……気持ちを伝えられただけで、充分だと思っていたが」



 俺の為に泣いてくれた。それだけで、もう充分だ。



『ゆぅ、せ』
 また、オレは


「龍亞、気を抜くな。強制的にお前の意識が体に戻れるという保証はない」
 また、オレは、泣くだけしか出来ないのかよ。



「龍亞。最期に、もう一回言わせてくれ」
 ありがとう。 ――――違う。違う、ちがう、ちがうちがうちがうちがう、違うっ!!


 今遊星を助けられるのは……遊星の背を押せるのは、オレだけなんだ!! オレは今、




 決闘で遊星と繋がってるんだ!!




『っ!!』
「っ! 、え!?」
 また分離しかけた遊星の右手を、半透明状のオレの手で、外から抑え込んで右手に戻す(、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、)
 D・ホイールのアクセルは普通のバイク同様右手で操作する。思った通り、触れられない筈の右手から、確かな感触が返って来た。だからオレはそのまま二人羽織をするように自分の体の背中側に移動し、後ろから両方の腕をぎゅっと掴んでそのまま背中に体を押しつけて、今入っている遊星の魂を自分の体へ抑えつけた(、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、)



「龍亞、お前」
『……これで、クリアマインドを使っても、どうにかなるでしょ』
「お前、一体何をっ」
『遊星。オレの、返事を聞きたいって、言ったね』
「!」
『本当は全部伝えたいけど、今は決闘中だから、短くまとめて言うよ』


 遊星の肩越しに、半透明状の自分の左手を見る。意識体となってもそこに嵌っている、メモリアルリング。

――たとえいつか、遊星がこの世に未練が無くなって成仏したとしても……他の皆と同じ様に、遊星がいなくなった毎日を過ごす事になっても。この指輪が、オレと遊星を繋いでくれるように。


 あの日言った言葉に、嘘はない。でも遊星がオレを好きだと言ってくれて、好きだなんて言ったから、あの日からオレはずっと臆病になってしまった。

 遊星の想いを受け止めて、自分の気持ちを認めて、伝えてしまったら。応えてしまったら。いつか君がオレの中から居なくなる【この日を】、そしてそこから皆と同じ様に君を失った日々を送る事に耐えられなくなると気付いたから、だから伝えられなかった。返事を先延ばしにして濁していれば、一日でも長く君といられるかもなんて思って……伝えられなく、なってしまった。




 でも、それじゃ駄目だった。そんな事をしても、遊星は離れて行ってしまうと今やっと分かった!

 だから!!



『遊星! オレも、オレも君と、同じ意味で君が好き!!』
『誰にも渡したくない、誰にも君を、奪わせたくない!! たとえ君の中からすべての未練が無くなったとしても、この決闘中、いいや死ぬまで!! オレの言葉で、体で、心で、魂で君をこの世に繋ぐ!!』


 死んだ事のないオレの魂が、既に死んでしまった遊星の魂を繋ぎ止める術なんて、無いのかもしれない。それでも、いや、



『でももし、もし、もしそれでも、君がこの世から消えてしまうなら……っ』

 それなら、尚更、




『その時は、あの世で待ってて。オレにこれだけ言わせてそれでも成仏しちゃった事を、オレが逝くまでずっと忘れずにいて! そんでもう一回会えたら、その時はちゃんと謝ってもらうからな!!』

 その事を、君の大きな未練として刻み込もう。






「……く、く」
『?』
「く、ふふ、ははは、あはははっ」
『遊星?』
「貴様、何がおかしい!!」


 ハ、と気付くと、離れていた筈のジャックがオレ達のD・ホイールのすぐ前にまで来ていた。ひょっとして、さっきから失速と蛇行してたのを心配して


「どうやら先程からアクセルシンクロを試みている様だが、やはり貴様は偽者の様だ。息が上がっている所を見ると、精巧なロボットという訳でもないらしい。いやむしろ、ロボットならまだ忠実に再現出来たかも知れんがな」
『……いや、これはかなり微妙かも』
「はは、は……悪い。ちょっと今、衝撃的な告白を返された」
「は?」
『ちょ、何が衝撃的だよ!!』
「今ならまた、空だって飛べそうだ。





――これで、俺の覚悟も決まった。














 行くぜジャック!!」

「っ!?」

 遊星がアクセルを加速させ、ジャックのD・ホイールを抜き去る。




「!? これは」
「おい、ハラルドドラガンッ! 今」
「どうしたチームラグナロク。あれ、てかその左目は」
「……神よ。いったいこれは、どうなって」

 ピットでモニターを見ていたラグナロクの三人、ドラガン、ブレイブ、ハラルドの三人は、突如発動したルーンの瞳が映した光景に言葉を失う。彼等の目に映ったもの……不動遊星の姿形を取ったyuuseiの後ろに寄り添う、おぼろげで半透明状の人型のナニカ。そしてもう一つ。それよりもよりくっきりと見える、白い光と、【あの】ドラゴン……!!






 WRGPのスタート地点が見えてくる。

 遊星の為に集まってくれた皆が、オレ達と……遊星とジャックの決闘を見守っている。



「行くぞ、龍亞」
『! ゆうせ』
「一緒に行こう。絶対に手放すな!!」
『っ、分かってる!!』



 遊星がさらにアクセルを握って加速する。吹き飛ばされない様に、全部手放さない様に、ぎゅっとしがみ付いてその瞬間を待つ。






「レベル8のスターダスト・ドラゴンに、レベル2シンクロチューナー フォーミュラ・シンクロンをチューニング!!」


 フォーミュラ・シンクロンが二つの光の輪となって、オレ達を通す門の様に大きくなる。

風が、光が、渦を巻いて、いやオレ達が渦を作り出して……眩しい。温かい。気持ちいい。





『これが、遊星が見ていた世界……』


 さっきまでずっと考えていた色んな事が、削ぎ落とされ、束ねられ、一つになっていく。

遊星の心とオレの心の境目すら分からなくなって……導かれる。包み込まれる。大きな力に。ううん、これは、これこそが、






クリアマインド!!






「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く! 光さす道となれ!!」

 右手が、全身が熱い。来る! 行く!!





「『アクセルシンクロォオオォオーーーーーー!!』」



 超える!!






「『生来せよ!!



 シューティング・スター・ドラゴン!!』」







 眩しくて一瞬視界が真っ白になって……気付いたらオレ達は、もう一回ジャックを抜いていた。

 そして、オレ達の頭上で輝くのは、スターダストじゃない。









「……あれは」
「うそ……」
「そんな……こんなことって……」





 スターダストよりもずっと強く眩い輝きを放つ、白いドラゴン。シューティング・スター・ドラゴン!!






シューティング・スター・ドラゴン(OCG効果・シンクロ表記だけアニメ)
風属性 ドラゴン族・アクセルシンクロ/効果 ☆10 攻3300/守2500
シンクロモンスターのチューナー1体+「スターダスト・ドラゴン」
以下の効果をそれぞれ1ターンに1度ずつ使用できる。
●自分のデッキの上からカードを5枚めくる。このターンこのカードはその中のチューナーの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。その後めくったカードをデッキに戻してシャッフルする。
●フィールド上のカードを破壊する効果が発動した時、その効果を無効にし破壊する事ができる。
●相手モンスターの攻撃宣言時、このカードをゲームから除外し、相手モンスター1体の攻撃を無効にする事ができる。エンドフェイズ時、この効果で除外したこのカードを特殊召喚する。










「……ばかな……」

 ジャックは、今し方起こった出来事を前に、今目の前に立ち塞がるそのドラゴンの姿に、茫然とそう呟くしかなかった。だがそれは皆も、彼の対戦相手であるyuusei以外、皆同じだった。それだけ今起こった事は、彼等の中で不可能に近い、いいや不可能な事だったのだ。


 その不可能が今この瞬間、覆されたのだ。yuuseiが、シューティング・スター・ドラゴンを呼び出した事で。遊星しか呼べぬ筈の、エクストラデッキに残っていない筈の、あのドラゴンを呼び出した事で。アクセルシンクロを、成し遂げた事で!!



「シューティング・スター・ドラゴンの、効果発動!!」
「!?」
 だが、yuuseiは待たない。彼が冷静さを取り戻すまで待つ事無く、呼び出したドラゴンの能力を引き出す。


「この効果は、お前もよく知っているだろう。デッキの上からカードを五枚ドローし、その中のチューナーの数だけ攻撃出来る」

 そしてyuuseiは、デッキの上に指を掛け、一枚目を引き抜く。



「一枚目! チューナーモンスター、デブリ・ドラゴン!! 二枚目! っ、ドッペル・ウォリアー。三枚目! シールド・ウィング。

四枚目! よしっ、チューナーモンスター、ハイパー・シンクロン!! 五枚目!! チューナーモンスター、ターボ・シンクロン!!



よって! シューティング・スター・ドラゴンは、三回の攻撃が可能となる!!」



「ジャックの場のモンスターは三体!!」
「yuuseiの攻撃可能回数は、シューティング・スター・ドラゴン(攻3300)とジャンク・アーチャー(攻2300)で四回!!」
「しかもレッド・ノヴァは守備表示だけど、フレア・リゾネーターは攻撃表示! しかもその攻撃力はたった300!!」

「この攻撃がすべて通れば、いや通らなくても! シューティング・スター・ドラゴンの三回攻撃でyuuseiの勝ちだ!!」



「バトル! シューティング・スター・ドラゴンで一回目の攻撃!! スターダスト・ミラージュ!!」

 こちらをけして振り向かぬまま、yuuseiが張り上げた声に応えるようにシューティング・スターはぐんぐんと高度を上げて上昇する。次第にその体から三色の分身が分離し、一体目の分身が急降下してエクスプロード・ウィング・ドラゴンへと迫る!!



「っ、まだだ!! 罠発動! レイジ・リシンクロ!! この効果により、フィールドのエクスプロード・ウィング・ドラゴン(☆7)とレッド・ノヴァ(1)を墓地へ送ることで、レッド・デーモンズ・ドラゴンを墓地から特殊召喚する!! 蘇れ! 我が魂にして不屈なる王者よ!!」

☆レイジ・リシンクロ
通常罠
自分の墓地に存在するシンクロモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターのシンクロ召喚の条件を満たすように自分フィールド上に存在するモンスターを墓地へ送り、選択したシンクロモンスター1体を墓地から自分フィールド上に、攻撃力を500ポイントアップして特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚したモンスター1体は、次のターンのエンドフェイズ時に破壊される。




「そして、このカードで特殊召喚したレッド・デーモンズの攻撃力は500ポイントアップする!! 攻撃対象だったエクスプロード・ウィング・ドラゴンが消えバトルの巻き戻しが発生した事で、貴様はもう一度攻撃対象を選び直すが、その前に罠発動! スクリーン・オブ・レッド!! このカードがある限り、俺のモンスターへの攻撃はすべて封じられる!!」

スクリーン・オブ・レッド
永続罠
このカードがフィールド上に存在する限り、相手モンスターは攻撃宣言をする事ができない。このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ時に1000ライフポイントを払う。この時に1000ライフポイントを払えない場合はこのカードを破壊する。
フィールド上に「レッド・デーモンズ・ドラゴン」が表側表示で存在する場合、このカードを破壊し自分の墓地に存在するレベル1のチューナー1体を選択して特殊召喚する事ができる。





 シューティング・スター・ドラゴンの連続攻撃で終幕を迎えるかと思われたが、ジャックの伏せていた二枚のカードによって実質yuuseiは彼に一切のダメージを与えられないまますべての攻撃を封じられた。だが、


「やるな」
「っ!」
「カードを三枚伏せて、ターンエンド」
「っ、っ……このエンドフェイズに、貴様に除外されたクリムゾン・ブレーダーが俺の場に帰還する! 俺のターン、ドローだ!!」

 ドローしたカードを見て手札に加えたジャックは、自らの頭上を、久しぶりに相対した白いドラゴンを前に唸る自らの魂たる竜を見る。先のターンで発動した二枚のカード、レイジ・リシンクロとスクリーン・オブ・レッドがエンドフェイズに齎すデメリット効果を受ける訳にはいかない。レイジ・リシンクロの効果によって召喚されたレッド・デーモンズの攻撃力は3500。シューティング・スターを上回っている。もし先程【彼】が伏せたカードがブラフなら、そのまま攻撃が通れば破壊出来る。でもそれは、あり得ない(・・・・・)





「貴様が……」
「?」
「……ゆうせい(・・・・)、今度は、俺の番だ」


 とくと見るがいい。その言葉を合図とする様に、ジャックは、セットされているそのカードを抜き取った。



「スクリーン・オブ・レッドの、もう一つの効果発動。フィールド上にレッド・デーモンズが表側表示で存在する場合、このカードを破壊し自分の墓地に存在するレベル1のチューナー1体を選択して特殊召喚する事ができる。再び我が力となれ、レッド・ノヴァ(☆1)」
「……これで、揃ったな」
「っ――!! レベル8のレッド・デーモンズ・ドラゴンに、レベル1のレッド・ノヴァとレベル3のフレア・リゾネーターの2体のチューナーモンスターを、ダブルチューニング!!」



 王者と悪魔、今ここに交わる! 荒ぶる魂よ、天地創造の叫びをあげよ!!

「シンクロ召喚!


出でよ、スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン!!」


 二体のチューナーが生み出した光の輪は炎を纏い、ジャックの体が、熱く、紅く、荒ぶるオーラを放つ。それらすべての鼓動を宿し、王者たる竜は、深淵より溢れ出ん力を掴み取る!!



スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン
闇属性 ドラゴン族・シンクロ/効果 ☆12 攻3500/守3000
チューナー2体+「レッド・デーモンズ・ドラゴン」
このカードの攻撃力は自分の墓地に存在するチューナーの数×500ポイントアップする。
このカードは相手の魔法・罠・効果モンスターの効果では破壊されない。
また、相手モンスターの攻撃宣言時、このカードをゲームから除外し、相手モンスター1体の攻撃を無効にする事ができる。エンドフェイズ時、この効果で除外したこのカードを特殊召喚する。




「来たか」
『そうだよね。それでこそジャックだ』

「凄い……シューティング・スター・ドラゴンとスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンが戦うのを見れるだなんて」
「……本当に、あの時みたい」
「え?」



「スカーレッド・ノヴァの攻撃力は、自分の墓地に存在するチューナーの数×500ポイントアップする。俺の墓地に眠るチューナーは六体!! だがそれだけではない。フレア・リゾネーターは自らを素材としてシンクロ召喚したモンスターの攻撃力を300ポイントアップする! よってスカーレッド・ノヴァの攻撃力は、合計3300ポイントアップとなる!!」

「てことは、つまり」
「攻撃力、6800!?」
「だけどシューティング・スター・ドラゴンは、攻撃宣言時に除外する事で攻撃を無効にする効果がある」
「ジャックの場にはスカーレッド・ノヴァとクリムゾン・ブレーダー。シューティング・スターの効果でスカーレッド・ノヴァの攻撃を無効にし、クリムゾン・ブレーダーがジャンク・アーチャーを破壊すりゃyuuseiのライフは風前の灯火となり次のターンの上級モンスターの特殊召喚も封じれる」
「が、そんな相手も余裕で予想通りだろう展開を、あのジャックがみすみす実行する筈もない」
「……あの伏せカードに、秘策があるってことか?」



「さらに手札からSp−エンジェル・バトンを発動! スピードカウンターが二つ以上ある時、デッキからカードを二枚ドローし、手札を一枚墓地に送る!! 墓地に送ったのはチューナーであるフォース・リゾネーター。よってさらに、スカーレッド・ノヴァの攻撃力は500ポイントアップする!!」
『これで攻撃力は、7300!』
「そして罠発動、スカーレッド・コクーン!! このカードはスカーレッド・ノヴァ専用の装備カードであり、バトルフェイズ中にスカーレッド・ノヴァが攻撃する相手モンスターの効果を無効化する!!」

☆スカーレッド・コクーン
永続罠
発動後このカードは、自分フィールド上に存在する「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン」1体の装備カードとなる。装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、バトルフェイズの間だけその相手モンスターの効果は無効化される。装備されたこのカードが破壊されたターンのエンドフェイズ時、自分の墓地に存在する「レッド・デーモンズ・ドラゴン」1体を特殊召喚する事ができる。




「これでシューティング・スター・ドラゴンの効果によって戦闘を回避出来なくなった!! さぁバトルだ!! スカーレッド・ノヴァ(攻7300)よ、シューティング・スター・ドラゴン(3300)を打ち砕け!!」

 ジャックは、王者だ。たとえ本人がそれを認めずとも、生きている他者の誰もが認める最強のキング。王に敗北も、敬遠も許されはしない。相手の最強の力を打ち砕く事でしか、彼にとって本当の勝利は訪れない。
 だが、もしも……無意識にジャックの指が、決闘盤のボタンへと伸びる。買い被りすぎかもしれない。それでも、疑わずには、憤らずには……期待せずには、いられない。こんな感情、一年前のあの日に、すべて消え失せた筈だったのに。






「罠発動! スター・エクスカージョン!!」
「――!!」


 その、カードは、




「おいあれ!!」
「あれはっ」
「あのカード――!!」

☆スター・エクスカージョン
通常罠
相手ターンのバトルフェイズ中に自分フィールド上に存在するシンクロモンスター1体が相手シンクロモンスターに攻撃を受けた時、発動する事ができる。戦闘するお互いのモンスターはゲームから除外され相手ターンで3ターン後のバトルフェイズ終了時にお互いのフィールドに特殊召喚される。





 スター・エクスカージョンの効果によって、シューティング・スター・ドラゴンとスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンがフィールドから消えた。いや、飛んだ。



「あの時と同じ様に、二体の竜は未来へ飛んだ……あの時の俺達の決闘から流れた時間が、お前と、皆と、そして俺もまた共に、腕を磨き強くなった」
「っ!!」

 あの時と同じ。
 その言葉に、ジャックはついにこの決闘を通してずっと否定し続けていたその感情を、肯定する。



「そうだ……俺はあの日の俺よりもずっと、強くなった。飾りでも道化でも無い真のキングの座を、お前を倒す事で完全とする所まで到達していたのだ!!」

 その、受け止めるにはあまりにもつらい現実を、認めて、受け入れる。





「だがその夢は、永久に叶わなくなった。そう思っていた。なのに何故、どうして!!」


 常識に捕われていては、負ける。



「どうして俺は、一年前のこの日に二度と抱き続ける事が出来なくなった筈の、この(、、)瞬間を迎えられたんだ!!

赤き竜の力も無く、ましてダークシグナーになった訳でもないのに、どうやって死の淵から戻った!!」



今俺が戦っているのは、まぎれもなく、かつてのライバル。そして、





「そして何故、戻って来たならどうして……どうしてもっと早く、俺達に、俺にそれを伝えなかった――――どうして俺に最初から、ただお前との決闘の事だけを考えさせてくれなかった!!」




 
親友(とも)!!






「答えろっ、遊星(、、)!!」










 ジャックの慟哭はその場で決闘を見届けていた者たちすべての、耳を打ち、脳を撃ち、彼等の中にあった同じ常識と不可能を、完膚なきまでに粉砕した。

「……う」
 自分の中の常識と共に、涙腺をも壊された者達の瞳からぼろぼろと涙が溢れ出し、直視させないようにとでもするように目の前がぼやける。何度拭っても溢れ出て、それでも何度でも拭って、見届ける事から降りたりしない。出来る訳ない。




「……」
 そして、ジャックの魂の慟哭を受けとめたyuuseiが……遊星の口が、ゆっくりと開く。




「死の淵から、戻ったんじゃない。俺が死んだのは事実で、けして覆らない真実だ」
「っ!」


「生き返った訳でも蘇った訳でもないんだから、生きているお前達の道に死者である俺が関与してはいけないと思っていた。たとえ信じてもらえずとも良かった。偽者だと言われても、パソコンの中の世界だけだとしても、決闘が出来るだけで幸せだった。――それだけで充分過ぎる程の幸せだったのに、欲が出た。なのにまた、奇跡は惜しみなく俺にこの時間を与えてくれた」
「奇跡……そうだ、この時間はまさに、神のごとき所業。ならば決闘の神がお前に、再び俺と戦う為に「違う!」



「俺とお前を再び戦えるようにしてくれたのは、神じゃない」
「ならば一体誰がっ」
「その答えが知りたければ、攻撃してこい。まだお前のモンスターは残っている」
「っ……クリムゾン・ブレーダーで、ジャンク・アーチャーを攻撃!!」
「罠発動! スター・シフト!! ジャンク・アーチャー(☆7)をエクストラデッキに戻し、戻したモンスターのレベルと同じレベルの別のシンクロモンスター1体を自分のエクストラデッキから選択して特殊召喚する。



 現れろ、パワー・ツール・ドラゴン!!」



☆スター・シフト
通常罠
自分フィールド上に存在するシンクロモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを自分のエクストラデッキに戻す。戻したモンスターのレベルと同じレベルの別のシンクロモンスター1体を自分のエクストラデッキから選択して特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したシンクロモンスターの効果は無効化される。


パワー・ツール・ドラゴン(アニメ効果)
地属性 機械族・シンクロ/効果 ☆7 攻2300/守2500
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。自分のデッキからランダムに装備魔法カード1枚を手札に加える事ができる。
また、装備魔法カードを装備したこのカードが破壊される場合、代わりにこのカードに装備された装備魔法カード1枚を墓地へ送る事ができる。





 ジャンク・アーチャーが光の粒子と化して消えた場から、黄色い玩具の竜が姿を現す。守備表示で召喚された為すぐに体は青に染まったが、




「馬鹿な、何故パワー・ツール・ドラゴンが――!! ま、まさか」
「これが答えだ。そしてこの答えは、決闘が始まる前に既に言った筈だ。


 龍亞の、おかげだと」


『!』
「一年前、俺の未来は確かに途絶えた。そう思った。だがまだ、俺はまだここにいる。消えた筈の俺の未来を、龍亞が繋ぎ止め、結び付けてくれたから!! 俺の未練ごと、すべてを受け入れてくれたからこそ奇跡が起こった!!」
「龍亞が、お前を――――そうか。なら」

 奴は何も、苦しみも傷付きも、していなかったのだな。ジャックの深く息を吐く様に出た言葉に、遊星の後ろで密着していた龍亞が、遊星にしか聞こえない優しい声で、うんと頷く。



「どうやったのかは分からんが、龍亞は本物の貴様を、俺の望みを叶える為にこの場に呼び寄せた。――ならばたとえ奴のエースだろうと、本気で粉砕しなければ貴様等に失礼に当たるというものだ!! 行け、クリムゾン・ブレーダー(攻2800)よ。パワー・ツール(守2500)を破壊しろ!!」
『うわ、やっぱり攻撃してきた!』
「だがそれでこそ、ジャックだ」
「ふん! もう気付いておろう。俺の伏せているこのカードは破壊神の系譜!! この攻撃を通す事で、貴様の未来は敗北へと直結する!!」
「言われなくともその攻撃は防がせてもらう! 罠発動、リベンジ・ツイン・ソウル!! この効果によって墓地のスターダスト(☆8)とジャンク・ウォリアー(5)を除外し、パワー・ツールの守備力を1300ポイントアップする!!」


破壊神の系譜
通常罠
相手フィールド上に守備表示で存在するモンスターを破壊したターン、自分フィールド上に表側表示で存在するレベル8のモンスター1体を選択して発動する。
このターン、選択したモンスターは一度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。


☆リベンジ・ツイン・ソウル
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する。自分の墓地に存在するシンクロモンスター2体をゲームから除外する事で、エンドフェイズ時まで、自分フィールド上に存在する攻撃対象モンスター1体の守備力は、除外したモンスターのレベルの合計×100ポイントアップする。この時、その守備力が相手の攻撃モンスターの攻撃力を超えていれば、その相手モンスターを破壊する。



「リベンジ・ツイン・ソウルの効果により、守備力が上回ったパワー・ツールを攻撃したクリムゾン・ブレーダーは破壊される! これでお前の場はガラ空きになった!!」
「それはどうだろうな。俺はカードを一枚伏せてターンエンド。そしてこのエンドフェイズ時、装備された状態で破壊されたスカーレッド・コクーンの効果により、墓地に存在するレッド・デーモンズ・ドラゴン1体を復活させる!!」


 蘇れ、レッド・デーモンズ・ドラゴン!!

 ジャックの場に、再び王者は舞い戻る。荒ぶる魂の片割れが、不屈の炎に燃え続ける限り。





「俺のターン!!」

 だが、魂に不屈の炎が灯っているのは、彼もまた同じ事。





「このスタンバイフェイズに、異次元の精霊の効果で除外したロード・ウォリアーはフィールドへと戻って来る。そしてロード・ウォリアーの効果で、デッキからターボ・シンクロン(☆1)を特殊召喚する!!」

ロード・ウォリアー
光属性 戦士族・シンクロ/効果 ☆8 攻3000/守1500
「ロード・シンクロン」+チューナー以外のモンスター2体以上
(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。デッキからレベル2以下の戦士族・機械族モンスター1体を特殊召喚する。

ターボ・シンクロン
風属性 機械族・チューナー ☆1 攻100/守500
(1):このカードが攻撃表示モンスターに攻撃宣言した時に発動できる。攻撃対象モンスターを守備表示にする。
(2):このカードの攻撃で自分が戦闘ダメージを受けた時に発動できる。受けた戦闘ダメージの数値以下の攻撃力のモンスター1体を手札から特殊召喚する。







   「――――来るか!」
   『行くぞ、パワー・ツール!!』





「『レベル7のパワー・ツール・ドラゴンに、レベル1のターボ・シンクロンをチューニング!!』」

世界の未来を守るため、勇気と力がレボリューション!!




「『シンクロ召喚! 進化せよ、ライフ・ストリーム・ドラゴン!!』」






ライフ・ストリーム・ドラゴン(アニメ効果)
地属性 ドラゴン族・シンクロ/チューナー ☆8 攻2900/守2400
チューナー+「パワー・ツール・ドラゴン」
このカードのシンクロ召喚に成功した時、ライフポイント2000未満のプレイヤーのライフポイントを2000にする。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する場合、効果ダメージは無効となる。
1ターンに1度、フィールド上に存在するこのカード以外の全てのシンクロモンスターのレベルを1〜12の数値の中で任意の数値にする事が できる。




「ライフ・ストリーム・ドラゴンがシンクロ召喚された時、ライフポイント2000未満のプレイヤーのライフポイントを2000にする!」
 玩具の鎧の中から解き放たれた生命を司る竜から、溢れ出る光の温もりが二人の決闘者へと降り注ぐ。これで遊星とジャック、二人のライフポイントが2000となった。



「ふん。敵に塩を送るとはな」
「生命の祝福。それがこのドラゴンの力の一つだからな……龍亞同様、既に死者となった俺にまで、別け隔てなく奇跡を与えてくれる」
「奇跡、か……確かにな」

 ジャックは、龍亞が初めてこのドラゴンを呼び出した決闘の場にいた。だからこそ分かる。その後遊星によって召喚された時も、龍亞が大人になってから行われた公式戦でもそうだった。このドラゴンが必要とされるのは、いつだってピンチの時。傷付いた主を癒し、今にも消えてしまいそうな生命の灯火を再び燃え上がらせ、そのすべてをもって不必要なダメージから主を守る時だ。




 そして進化を遂げた竜は、今自分を使役している遊星の望みを叶える力を持っている。




「罠発動、次元渡航(ディメンジョン・ボヤージュ)!! この効果によって、俺は除外されているシンクロモンスター三体を自分フィールド上に特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚したモンスターのモンスター効果は無効化され、攻撃する事はできない。――ジャック、俺はさっき言ったな。あの時と同じ様に、二体の竜は未来へ飛んだと!!」
「何っ!? 貴様まさかっ」

「そうだ。スター・エクスカージョンによって飛ばされた二体の竜という俺達の未来は、【現在(いま)】となる!!」



次元渡航(ディメンジョン・ボヤージュ)
通常罠
ゲームから除外されているシンクロモンスターを可能な限り選択して自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。この効果で特殊召喚したモンスターのモンスター効果は無効化され、攻撃する事ができない。また、このモンスターはエンドフェイズ時にゲームから除外される。
(※テキストを読む限り可能なプレイとして実行します)





「俺が選択するのは、スターダスト・ドラゴン!! シューティング・スター・ドラゴン!! そして、スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン!!

 そして、ライフ・ストリーム・ドラゴンの効果により、このカード以外の全てのシンクロモンスターのレベルを1〜12の数値の中で任意の数値にする事ができる。俺はお前の場のレッド・デーモンズ・ドラゴンを含め、ライフ・ストリーム以外のすべてのモンスターのレベルを1に変更する!!」



「……ふ。なるほど。前のターンでロード・ウォリアーの効果を発動させなかったのは、クリムゾン・ブレーダーの効果を回避しつつ、この瞬間へ繋げる為か」
『これでレベル1のシンクロモンスターが四体と、ライフ・ストリーム・ドラゴンが揃った!!』
「……おいおい、つれないぜ遊星。俺等を仲間外れたぁ、いい度胸だな」
「……ふふ、そうね。でも、見て。ジャックの顔を」
「本当。ジャックも……遊星も、楽しそうね」






 まるで、一年、いや九年以上前のあの時に戻った様に、皆笑った。得意げに、穏やかに。心の底から涙と共に溢れる、温かい気持ちを唇に乗せて。


 さぁ、皆もう、気付いているだろう?



 そろそろ、この奇跡の時間も、終わりを迎えようとしている。




「行くぜジャック!!」
「来い、遊星!!」

 龍亞がその全身を使って遊星の体を掴むと、遊星のD・ホイールが加速し、WRGPスタート地点をトップスピードで通過する。
 その瞬間彼等は確かに見た。彼の体が、D・ホイールが、眩き黄金に輝く姿を。



「レベル1となったシューティング・スター・ドラゴン、スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン、ロード・ウォリアー、スターダスト・ドラゴンに」
『レベル8、ライフ・ストリーム・ドラゴンをチューニング!』





集いし星が一つになる時、新たな絆が未来を照らす!





「俺達の未来と、思いと、宿命をも繋ぎ、今こそ再び光さす道となれ! リミットオーバー・アクセルシンクロォオオオ!!」



 上空にかかった雲が割れ、生み出された風によって散り散りになる。そして空より、いや宇宙(そら)より降りそそぐ光は、かつて一度だけ召喚されたあの日の様に、巨大な竜となって世界を照らす。





「『進化の光、シューティング・クェーサー・ドラゴン!!』」





 さあ。

 もう一度、未来をその手に。






「シューティング・クェーサー・ドラゴンで攻撃!」

『天地創造撃!!』




「『ザ・クリエーションバースト!!』」





―END―


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!!


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