今日はなんて最高の一日なのだろう。
 ハレルヤ!! 神様マジハレルヤっす!!






家庭教師とハッピーラブレッスン☆








「いい天気だ。絶好のショタ日和だな〜」

 休日。はデッキの強化の為とあるカードショップへと足を運んでいた。今日の彼は一人で、遊星達はいない。というかもしいたとすれば、先程の発言ですぐさま無言のしばきが発動している事だろう。
 


「今日のテレビの占いすげー良かったし♪ さてさて、今日はどんなショタとの出会いが待ってる事やら……ん?」
 大通りから少し路地を入った場所にあるその店は、高校生や大人よりも可愛いショタ、ごほん、まだ幼い子供達にいっぱい会えるという彼にとってとてもお気に入りの穴場店。角を曲がればもうそこが店なのだが、何だか今日は騒がしい。が、それは活気で賑わっているというよりも、




「……何かあったのか?」

 一瞬、怪訝そうに眉を寄せるだったが、次の瞬間にはすぐさま明るい笑みを浮かべて入口付近で中を見ている顔見知りのショタ……少年へと話し掛ける。ショタにはいつだって笑顔で赴くのだ。




「よ! 何やってんだ?」
「あ、! 大変なんだよ! お店が潰されそうになってるんだ!!」
「……んん?」


 何ですと? 少年の切羽詰った声には一瞬だけ笑顔を凍らせながらも、すぐに反芻する。



「店が潰されそうって、この店そんなに儲かってなかったのか」
「ううんそうじゃなくて。えっとね、何か凄く怖い顔した人達が突然来て」
「ストア・ブレイカーだよ!!」

 が来た事に気付いて入口付近にいた仲良しの子供達がわらわらと駆け寄ってきて、口々にに状況を説明してくれる。顔が怖いだの、デュエルに勝ったら店の売上げを持ってくだの、レアカードも全部だの、たくさんの口が一斉に紡ぐ異なる言葉を黙って頷きながら聞いた後、はゆっくりと口を開く。




「……そうか。何か凄く悪そうな怖い顔したストア・ブレイカーの三人組が、この店を滅茶苦茶にしに来たってことだな」
『そう!!』

 のまとめに、彼へ説明していた子供達が大きく首を縦に振った。どうやらは子供限定で聖徳太子モードに入れるらしい。そしてさらにそのストア・ブレイカーなる集団はとてもデュエルが強いらしく、この店で行なわれる大会でも常に上位に入る常連の子供達が次々に破れていったらしい。あと一応裏情報として、その集団はテュアラティンは持っていない。何の裏情報だろうか。




「ほう……確かに相当の強さみてぇだな」
「それでね! 今そのストア・ブレイカーと、お兄ちゃんが戦ってるの!」
「お兄ちゃん?」
「うん。初めての人だったからてっきりそいつらの仲間かと思ったら、あいつらにデュエル挑んでくれたの」
「ほほう。中々に素晴らしいお兄ちゃんじゃないか。……まさかそのお兄ちゃん遊星やクロウじゃ」
「でもねでもね、ピンチなんだ!」
「ていうか負けそうなんだ!!」
「……ないな。うん」


 ていうかもし知り合いで負けそうになっているのなら、後ろから思いっきり茶化してやろう。そうが考えていると、店内からショタ達の悲鳴が聞こえてくる。どうやらそのお兄ちゃんが負けてしまったらしい。店内のあちこちから、やだー! とか、やめてー! とかいう悲鳴が入口外にいる彼等の元にまで聞こえてきていた。



「どうしよう。おれ達の遊び場が、あんな奴等に奪われちゃうなんてやだー!!」

 誰かがそう言ったことで、伝染するように子供達の瞳に溢れんばかりの涙が浮かび、零れていく。それを黙って聞きながら、は静かに立ち上がり、子供達の頭をぽんと撫でる。撫でる。一人ずつ、仲間外れのないように全員の頭を撫でていく。



 その優しい手に子供達が顔を上げた時には、彼はゆっくりと店の中へと入っていって、


「ハッハッハ!! ざまぁねぇな。この程度の実力しかねぇデュエリスト共が利用してるなんざ、カードの質も落ちるってもんだ!! いいカードは強いデュエリストが使ってこそ価値を見出す。これでこの店にはもう俺達に勝てる奴はいねー。約束通り、ここにある金も売りもんも全部いただいていくぜ!!」
「う……くそぉ」


 負けた事で涙声になっているお兄ちゃんらしき人物の隣に立ち、ストア・ブレイカーとかいう奴の前に静かに対峙していた。遊星とジャックの間位の身長を持つ彼が店内へと入れば否が応にも目立つ筈なのに、何故か店内にいる者達は彼の来店に気付くのが少し遅れた。



「! !? な、何者だてめぇ! いったい何時入ってきた!」
「……はっろーマスター。何だか面白そうな事になってんじゃねーか」


 ストア・ブレイカーの内の一人の声を華麗に無視して、はいつも通りの気さくな声で店の奥にいた店主に声を掛ける。少し腰の悪いこの店主が椅子ではなく地べたに座ったままなのを見て、どうやら誰かに突き飛ばされた際腰をやっちゃったのだろう。……まぁ、誰かなんて答えは決まってるだろうけども。



「シカトこいてんじゃねーよ! お前も俺様にぶちのめされに来たってのか!!」
「……俺はカードを買いに来たんであって、そんな予定一つも入れてねーよ。そしてこのお兄ちゃんと違って、この店の常連でもある。あと、この兄ちゃん以外のお前等が倒した奴全員にも勝った事がある」
「……ほう。つまりお前を倒せば終いって言いてぇのか?」
「俺はただ事実を言ってるだけだ。そして俺も、お前にデュエルを申し込む。ショタを泣かせる奴は誰だろうと許さん」
「ハッ! いいだろう受けて立ってやる」
「折角だ。デュエルはここじゃなくて外で、決闘盤を付けてやろうぜ。……てめーらから溢れる胸糞悪い空気で、ショタの醸し出すいい空気が汚れちまったからな」
「んだとぉ!?」
「それとそこのお兄ちゃん。ありがとな。あんたには感謝してもし足りないぜ。ほら、泣いてないで顔上げろって。見ず知らずのショタの為に戦ってくれるなんて、まさにヒーローってもんだ。そうだろ……」


 って、あれ? 男を挑発しつつお兄ちゃんへと視線を向けたは、そこで少し不思議そうに首を傾げる。お兄ちゃん、と店の外で聞いていたからてっきり自分と同じ位かあるいは少し下の高校生位を想像していたのだが……いやでも確かに子供達から見ればお兄ちゃんに入るだろうが、自分から見ればえらく若い、というか幼……




「っ、ごめん。負けちゃって」
「……――! っ!!」


 机に突っ伏して泣いていた、『緑色の髪のポニーテールの』お兄ちゃんが見せた綺麗な涙で濡れた赤い顔を見たの中に、ズッギャァアアアアアアン!!!!! というとんでもない衝撃が走り抜ける。そしてそのまま、無駄が一切ない自然な動作でその『お兄ちゃん』の隣へと膝を付き、手をぎゅっと握る。




「え? あの?」
「俺はって呼んで。君のお名前は?」
「え? 名前? る、」


 龍亞、だけど。

 『お兄ちゃん』、龍亞がそう言った瞬間の顔がぱぁあああっと明るくなり、同時刻家で家事をしていた遊星の身に尋常じゃない寒気が走り、持っていたフライ返しが握力で粉砕されていた。



 だが勿論遊星の今の状態など知る由もない龍亞はというと、突然自分の手を両手でガシッと掴んで離さないという状況が理解出来ずにいたのだった。



「龍亞……なんていい響きで、ピッタリな名前なんだろう」
「あ、ありがとう?」
「そして唐突なんだけど、俺とお友達になってください」
「え、は?」
「俺龍亞君の事凄く大好きになりました。だから友達になってください。お近づきになりたいです。ごつくならないのを前提にお付き合いプリーズ!!」


 先程までのバトルムードな空気が完全に吹っ飛んでしまったのなんて気にも止めずに、は龍亞への熱烈アプローチを開始している。ある意味も何も、遊星先生の思っていた通りに龍亞の事が大のお気に入りになったようだった。

 ストア・ブレイカーと龍亞はの荒ぶるショタ萌に付いて行けずポカンとしているし、店にいた他の子供達と店主はあーまた始まった、と冷たかったり生温かかったりする目で黙って見つめている。後者の反応を見る限り、どうやら彼がこの店でショタを口説くのは一回や二回や十回所ではないらしい。



「ごつくならないって、そんなの成長しなきゃ分からな……って、お付き合い? だ、駄目駄目!! お、オレその、こ、恋人いるから無理!!」
「え、恋人? 別に構わないぞ」
「え?」
「だって俺にとってのショタは手を出すものじゃなくて愛でるものなの。ぎゅってしたりよしよししたりちょっと離れた所から見守ってたりしたいものなの。だから別にキスしたいーとかそれ以上したいーとはならないから、つまり恋人がいようが許婚がいようが愛でさせてくれるなら全然オッケーって訳!!」


 何が全然オッケーだ、とこの場に遊星がいれば龍亞をの魔の手から奪還し全力で+−ドライバーを放っていただろうが、今、彼はいない。いなきゃいけないのに居合わせられなかった。なのでフィーバーは止まらない。キスとかそれ以上、の所で遊星とのアレやコレを思い出して赤面する龍亞に、あらやだ何この子輪を掛けて可愛いときゅんきゅんしまくりである。




「…………い……い、いい加減にしろショタコン野郎!! てめぇ俺とデュエルするんじゃねーのか!? この店の売りもん全部持ってってもいーのかくそショタコン!!」
君頼むよ〜。売り物全部持ってかれたら、君の大好きな子供達が泣いちゃうよー」
「んん? ち、折角の可愛いショタとの触れ合いを邪魔しやがって。何かますます許せなくなってきたぞ」
「そうだよやっちゃって!!」
「おれ達応援してるから!! 絶対負けないで!!」
「ふれー! ふれー! ファイトー!!」
「ハッハッハッハ!! 俺超絶好調!!」




「……な、何なのこの人」

 待っていられなくなったストア・ブレイカーの声を皮切りにして急速に進んでいく展開に付いて行けなくなる龍亞が、呆然と呟く。そしてふと気付くとストア・ブレイカー達は面白い位彼に翻弄されてて、店内の子供達も店長も、未だ自分の手を離さない目の前の彼を応援していて……皆皆、彼のペースに巻き込まれて乗せられている。



「何だと思う?」
「っ」

 小さく呟いた言葉が聞こえていたのか、視線を戻したが楽しそうに笑う。細められた深い藍紫の瞳は悪戯を思いついた子供そのものの様に茶目っ気がいっぱいで、なのに唇に浮かべられた笑みは大人が子供へと接するように優しさで溢れていて。



「それはな。俺にも分からねーの」
「え?」
「だから見つけてほしいんだ。で、見つかったら教えてほしいんだ。龍亞の中には俺が、一体どう映ってるのかさ」


 な? そう微笑むに、龍亞はぽかんとまた理解から置いていかれる。けれどふと気が付くと、



「さぁて龍亞きゅんへのアプローチとショタっ子達の居場所奪還の為に、いっちょやってやるとしますか」
「る、龍亞きゅん!? きゅんって何!?」
「さあ表に出なモブキャラ共。ショタっ子はお家に帰るのが早いんだ。ワンキルで勝負決めてやるよ」
「んだと!? 上等じゃねーか!!」

 自分の手を未だに離そうとしない彼によって……自分の中から、ストア・ブレイカーに負けた悔しさと悲しさが跡形もなく吹っ飛ばされていたのだった。








***



 店の外に対峙し始められたとストア・ブレイカーのデュエルは、圧倒的で一方的で一瞬にして終了した。ショタを泣かせたあらゆる奴に対して粉砕玉砕大喝采級の攻撃力を発揮するに、ショタの応援が装備された以上、この結果は火を見るよりも明らかだったと言える。


 だが、ストア・ブレイカーはしつこかった。デュエルの戦術がではない。お前が戦うのは俺だけじゃない。まだ後ろに二人残っている、とこう言い出してきたのだ。確かに一人倒せば終わりなんて言ってないし、それを言い出せばの前に龍亞や他の子供達もデュエルしているから、はその条件を呑まざるをえない。


 ただ、それに慌てた声をあげたのも、何とか抗議しようとしたのも、今日初めてこの店に来た龍亞だけだった。お店にいた他の子供達も店のおじちゃんも、当の本人であるも、全然焦ってはいなかった。



「オーケーいいだろう。次も一瞬でケリ付けてやるよ」
!」
「へーきへーき。今日の俺、素敵な出会いがあったからかすげー調子いいんだよね〜」


 そう、パチン☆と龍亞にウインクをして二人目とのデュエルを開始したの背中を、龍亞は呆然と、不安そうに見つめる。何故あんなにお気楽に落ち着いていられるのか分からず困惑する彼に対し、一人の子供がこう答えた。



「大丈夫だよお兄ちゃん。は凄く強いんだ」
「強いって、確かにさっきのワンターンキルはとんでもなかったけど」

 けれど何度も行えるものではないからこそワンターンキルは凄いのであって、後ろの二人は既にのデッキを、デュエルを見ている。たくさんの店を滅茶苦茶にしてきた実力の持ち主達だ。当然このデュエルの間に、対策だって取られてしまう筈だ。そう不安の表情を消さない龍亞に、子供達は次々に大丈夫だと続ける。



はね、本当に強いんだよ!」
「僕達全員、に一回は負けてるんだ」
「このお店のデュエル大会、が来てからジュニアの部が出来たんだよ」
「それまでは年齢も学年も関係なかったんだけど、が三連覇しちゃってからおじちゃんが年齢せーげんしたの!」
「このお店のお客さんに大人ってあんまりいないから、はもう殿堂入りのようなものなんだよ!!」
「……そんなに強いの?」
『うん!!』

 満面の笑みで頷く子供達に、龍亞は『は絶対負けない』という確固たる信頼を見る。彼等はの実力を、彼がどれほど強いのかを知っている。だからの勝利を疑わないし、何にも心配する事無くデュエルを見ていられるのだろう。先程のワンターンキルも、その安心に輪を掛けているに違いない。



 龍亞は視線を、子供達からへと戻す。すると何故かもこちらを見ていて、携帯のカメラでこちらを撮影していた。どうやら龍亞達ショタの可愛い会話が聞こえていた為、これシャッターチャンスじゃね? と思ったらしい。その奔放さに、龍亞の中でまた心配の芽がもたげた。



! 油断は危険だよ! 油断鯛焼きって言うでしょ!!」
「油断鯛焼き? ひょっとして油断大敵か? あ、何か鯛焼き食べたくなってきた!! 龍亞きゅん後で一緒に買いに行かない?」
「え、あ……い、いやいやいや今デュエル中だよ! 凄く強くても油断は良くないよ!!」
「大丈夫だってお兄ちゃん。がデッキを弄ってない限り絶対平気!」
「え? 何でデッキを弄ってなければ平気なの?」

ってデュエルは凄く強いんだけど、デッキを作るのはへたくそなんだ!」
「だから僕達も一緒に考えてあげるの!」
「強いんだけどそういう所が間抜けなんだぜー!」


 なんだか話が変な方向に進んできたのを察したのか、デュエルを進めながらは高笑いと共に大きな声でそれ以上のお話を止めさせる。



「ハッハッハ安心したまえ!! このデッキはこの間サティスファクションズに散々弄繰り回されて、大幅なパワーアップを果たしてるんだぜ!!」
「サティスファクションズに!?」
「すげーそれなら大丈夫だ!!」
「……サティスファクションズ?」
の大学の友達グループなんだって! 皆よりデュエル強くて、その人達が改良したのデッキちょー強いんだよ!!」
「へぇ。って大学生なんだ」



 てことはって遊星先生と同い年なのかな? 外見は年上っぽいけど、雰囲気は年下っぽいよなぁ。

 なんて龍亞が思っていると、子供達から歓声が広がる。どうやらまた、ワンターンキルで勝負を決めちゃったみたいだ。



「わ、わ! 凄い、また勝っちゃった!!」
「ラッシャラァアアアア!! ショタの応援ある限り、俺に負けはごぜーません! とくらぁ!!」
「凄い! またたったの三ターンで勝ったね!!」
「お気に入りの子の前ではカッコ付けたいお年頃なのですよ。龍亞きゅん達の為なら連続ワンターンキル位屁でもないもんねー!!」
「く、ちょ、調子に乗ってんじゃねーぞ!! 今の二回のデュエルで、お前のデッキの戦い方は充分分かったんだ。次にワンキルされるのはてめーの方だぜ!!」
「ああ、だろうな」
「は?」
「俺お前等の事モブとは思ってるけど、別にザコとは思ってないからな。このままじゃ危ない気はしている。でも、全勝しなきゃいけないからな。獅子搏兎……全力で行かせてもらうぜ」


 絶好調青天井で調子に乗っていると思ったら、相手の挑発にも冷静に乗ってくる。その落差ともギャップとも取れる言動の幅が広すぎて、確かに龍亞は戸惑ってしまう。まだ会ったばかりの彼の目には、は捕らえ所の無さ過ぎる雲のようにも見える。の言葉は売り言葉に買い言葉と言うにはあまりに冷静で、このデッキのままでは自分は負けるだろうと、思っているようにも見えた。



「だ、大丈夫だよ! だって、対策を取ろうにも、二回ともワンターンキルなら大した事は分かんない筈だよ! ハッタリさあんなの!!」
「……龍亞きゅんが俺の心配してくれてる。どうしましょう俺こんなにきゅんきゅん来る感情は一週間ぶりだわ」
「案外短いね!!」
「あぁ安心してくれ一週間前のきゅんきゅんは学食の牛丼が肉三割増になった奴だから!! ショタに対するきゅんきゅんはもっと前だからさ☆」
「てめーとっとと準備しやがれ!! ハッタリかどうかは仲間がちゃんと証明してくれるからよ!!」
「……悪いが、もうちょっと待っててくれ。準備って言われて、大事な事思い出した。龍亞きゅん一緒に写メ撮ろうぜ〜♪ はい、ピース!!」
「何の準備だ何の!! デュエルの準備をしやがれってんだ!!」
「ちょ、え、何で写真!? そんなのデュエルが終わってからでいーじゃん!!」
「そう言えば、僕らの時もそうだったよね」
「うん。ショタってのと仲良くなる度に、友達に自慢の写メール送ってるんだ」
「友達に?」
「うん。その人もショタコンで、のダチなんだって」
「へ、へー……なんか複雑」


 遊星に知られたらとっても面倒な事になりそうなので、黙っておいた方が良さそうだ。そう遠い目になる龍亞の前でタイトルには『デュエルなう』、本文には短く『凄く可愛いショタに出逢いましたo(*^∀^*)o』というメッセージのみの簡潔なメールを送り終えたは、ようやく三人目のストア・ブレイカーへと向き直った。




「待った〜?」
「……別に構わないさ」

 もうこれ以上何を言っても無駄だろうというのを理解したのか。三人目はそれ以上余計な事は言わずとまるで待ち合わせしていたカップルのような会話をした後、決闘盤を構えた。もデッキをセットし直し、二つのデッキが決闘盤によってシャッフルされる。




「「決闘!!」ラースト!!」


 ラスト、の部分を強調したを無視し、相手の先攻で決闘が開始する。もそれについて特に言う事は無かった。




「私はまず、魔法カードつまづきを発動。そしてモンスターをセット、カードを四枚伏せる。ターンエンド」
「ほほぅ? 初っ端から全力でぶつかってきたか。いいねそういうの嫌いじゃない。俺のターン、ドロー!」
「このドローフェイズに、伏せカードを二枚発動。グラヴィティ・バインド、シモッチによる副作用。そしてスタンバイフェイズにギフトカードを発動。シモッチの効果により、3000ポイントのダメージを喰らえ!!」
「ゑ? どわわわわっ!!」


 たった二ターン目で、一気にのライフが1000に下がり、子供達から悲鳴が上がる。相手は無傷のままロックを完成させており、このターンで何とか手を打たなければ次の相手のドロー次第ではが負けてしまう。龍亞だってそれが分からないほどデュエルに対して無知ではない。

 でも、あらゆる召喚方法に反応し問答無用で守備表示にするつまづきと、レベル4以上のモンスターの攻撃を阻むグラヴィティ・バインドのロックは固い。しかも相手にはまだ伏せカードもある。仮に大嵐などの除去カードを使って伏せカードごとこのロックを無くしても、伏せたモンスターによってはまたどうなるか分からない。どの道このターンで、このフィールドを何とかしなければ次のターンに勝負を決められてしまうかもしれない。




……!」

 だが、龍亞の焦る声とは裏腹に、はふーむ、とたいしてピンチという顔もせずに手札を見ているようだった。もしかして、手札に大嵐があるのだろうか。だからあんな、緊張感の無い顔をしているのだろうか。



「……よし。じゃあまず、俺は手札から永続魔法ウォーターハザード発動。この効果によって手札からレベル4以下の水属性モンスター一体を特殊召喚する!」
「え?」

 大嵐じゃ、ない? 



「さぁ行くぜ! 俺は手札から、このモンスターを特殊召か……何だよ今いい所なのにー」

 と、そこでの動きが急停止し、ポケットからずっと震え続けている携帯電話を取り出す。が、着信相手を見た彼の顔が……意地悪そうに唇が吊り上がり、なんとそのまま電話に出てしまう。




「メール届いたー?」

!! あれはいったいどういう事だ!!』


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