「なぁ遊星。どっちが本当のあいつなんだ?」
「……どっちも、本当のあいつさ」

 だからこそ……。
 観戦していた遊星は鬼柳の問いにそう返して。それ以上の言葉を紡がぬ様、奥歯をぐっと噛みしめるのだった。







家庭教師とハッピーラブレッスン?







 現状だけ説明すれば、ジャックとがデュエルをしている。今度大学の近くのカフェが出した新メニューであるアルティメットジャンボパフェとブルーアイズマウンテン一杯を賭けたのがきっかけらしいが、とりあえず二人はデュエルをしている。

 そしてそろそろ、決着がつこうとしている。いや、今ついた。



「レッド・デーモンズ・ドラゴンでブリューナクに攻撃! アブソリュートパワーフォオオオス!!!」
「だあぁああ負けたぁあああああ!!!」

 どうやらデュエルはデュエルディスクで行っていたらしく、どこからか吹いてくる戦いの風にコートを靡かせるジャックの前、がく、とが膝を付いた。とても分かりやすい勝者と敗者の図だ。



「ぶぅう、やっぱりジャッキュン超強い」
「誰がジャッキュンだ誰が!! 貴様もこの間よりは上達していたぞ」
「うー悔しい。三回勝負ならもうちょっと出来る子なんだけどなぁ俺」
「一勝はな。今回は一本勝負だ」
「やっぱり強いなぁサティスファクションズ」
「サティスファクションズじゃねぇチームサティスファクションだ!!」

 観戦していた鬼柳がとジャックの会話に乱入してくる。もうここまで来たらこれは一種の掛け合いと言うかお約束ネタとなってしまっている。



「いいじゃん鬼柳きゅんそんな細かいことー……まぁいっか。じゃあジャッキュンに高ぇコーヒー奢るとすっか」
「お前がまぁいっかって言ってんじゃねーよ!」
「まぁいいではないか鬼柳。早く行かんとカフェが混む」
「お前はただコーヒー飲みてぇだけじゃねーか!」
「俺も早く行きてぇなー。そろそろあのカフェの向こうの通りを下校中のショタ達が大量に通る頃だし」
「……ジャックもう少しだけここにいないか?」
「そうだな……いや、とっととカフェに行ってこいつを拘束していた方がいいかもしれん」


 の一言で言い争いになりそうだったジャックと鬼柳が結束し仲良く何かを相談している。とそこに遊星とクロウも合流してきた。どうやらさっき授業が終わったらしい。



「なんだよ。ジャックとデュエルしてたのか?」
「おう! だけど見事に負けちゃって、これからジャックと一緒に下校中のショタ達を見に行くところだってぇ!!」
 とジャックの腕に装着されたデュエルディスクを見てのクロウの言葉に、が眩しい笑顔でいつの間にか変わってしまっている目的を告げようとしたところ遊星の無言のしばきを受けてしゃがみ込んだ。


「遊星きゅん、痛い」
「お前が悪い」
! 貴様どさくさに紛れて俺のブルーアイズマウンテンをうやむやにする気か!!」
「忘れてないぞジャッキュン! だから早く行こうって!! ショタと高ぇコーヒーが待ってるぞ!!」
「……ジャック。すまないが後20分、ここで待ってくれないか」
「俺からも頼むジャック。20分ここでを抑えておかねーと後々面倒くせぇし」
「……ふん」



 どうやらショタを前にしたを止めるのは相当面倒くさいらしい。遊星とクロウにまで懇願され、ジャックもまぁ奢ってもらえるのは変わらないかとブルーアイズマウンテンに逸る心を抑える。


 だが、


「えー何でー? 俺とっとと行きたいー!」
 ショタに逸る心を抑えようとしないがごねる様にジャックの腕を取りぶんぶん振る。これがもっと身長が低くて可愛らしい顔つきをした、要するにショタっぽい外見なら少しは微笑ましくも映っただろうが、ジャックと遊星の間位の身長にワイルド系カッコいい顔でされても、寒いだけだ。



。お前は少し大人になれ」
「俺お前より年上だぞ。そしてもうお酒も飲める年だぞ。お酒も甘いのも大好きだぞ両刀遣いだぜ遊星きゅん!」
「お前が両刀遣いって言うと意味が違って聞こえる……」
「どしたクロウ。顔色悪いな」
「お前のせいだお前の!!」
「えぇえええどしたのクロウきゅんカルシウム不足はよくねーぞ! 牛乳飲め牛乳、ミルクミルク。あ、ショタのミルいだぁ!!」
「何故か勝手に手が動いた」
「グッジョブ遊星。よくやった」

 容赦もへったくれもない遊星のしばきにもう一度しゃがみ込んだを心配する声は、当たり前だが一つもない。遊星酷い……としゃがんだまま零れるの言葉にも、賛同する声は一つもない。



「だぁー腹立った! 遊星俺とデュエルしろ!」
「何故そうなる」
「何度も何度も理不尽にしばかれた恨みを晴らす!」
「理不尽だと思ってんのはお前だけだぞ」
「むしろ遊星グッジョブとしか思ったことねーけど」
「俺にブルーアイズマウンテンを奢ることを忘れるなよ」
「うわぁあああんサティスファクションズ冷たいぃいいい!!!」
「だからチームサティスファクションだっつの!!」


 一人も味方を得られないだったが、このやり取りは慣れているのかすぐに立ち直りビッシィイ!! と遊星を指差す。



「さっきのデュエルでは出てこなかったけど、こないだの町内大会の時の俺と同じだと思うなよ!」
「新しいカードを入れたのか」
「うんちょっと試してみたいカードがあったから……これから戦う奴にそんなこと教えられねーな!!」
 自分から言い出したくせに、と思いながらも、遊星もまたデュエルディスクを装着し対峙する。早期決着はなるべく避けよう。最低20分は稼ぎたい。





「「決闘(デュエル)!!」」


 そうして、遊星とのデュエルが始まり―――





「スターダスト・ドラゴンでマーメイド・ナイトを攻撃! シューティング・ソニック! ジャンク・ウォリアーでダイレクトアタック、スクラップフィスト!!」
「ま、負けた……」
 ガク、とまたは膝を付いてしまうのだった。さすがに間を開けずの二連敗はキツかったのか、さっきよりもだいぶ大人しい。



「くっそー、グングニール出せた時は行けると思ったのに。まさかあのタイミングでスターライト・ロードが出てくるなんてなぁ」
「あぁ……俺も、少し驚いた」
 少しかよーとむくれるの元へと歩み寄りながら、遊星は先程のデュエルを思い出す。


『俺はD・スコープンを召喚! でもってその効果でD・パッチンを特殊召喚!!』


「(……まさか、がディフォーマーを出してくるとは)」
 まぁだがその後に展開されたのはパワーツールのシンクロ召喚ではなくパッチンの効果による屑鉄のかかしの破壊で。
 その後フィールド上にいた氷結界の風水師と特殊召喚された水属性モンスターでのシンクロ召喚でグングニールを呼び出したのは良かったがグングニールの効果にチェーンしてスターライト・ロードが発動。
 グングニールを破壊されスターダストを呼び出され次のターン呼び出されたジャンクウォリアーとの攻撃で遊星の逆転勝利。

 ……いや、逆転と言える程遊星が劣勢に立たされていたかというと、ちょっと疑問が残る訳だが。



『へっへーんパワーツール召喚! 効果発動、パワー・サーチ!!』
『パワーツールの攻撃! クラフティ・ブレイク!!』
『へへ、エンドエンド! 先生のターンだよ!』



「……まさかな」
「何がまさか?」
「! いや……とりあえずお前のそのデッキに、ディフォーマーはあまり向いていないようだと思ってな」
 脳裏に嬉々としてエースモンスターを召喚する龍亞を思い出し、まさか二人はすでにどこかで会っててそれで投入したんじゃ、なんて邪推をしていた遊星は、さりげなく、さりげなくを装いのデッキからディフォーマーを外すよう誘導しようとする。


「んーやっぱ単体投入は無理あったかー」
「お前のデッキは水属性メインだし、ディフォーマーだけではグングニールは呼べない。使うならもっと召喚に縛りの無いレベル7のシンクロを投入しないとな」
「そっかそうだよな。結構面白い効果だから使ってみたいって思ったけど……やっぱ使うなら専用デッキか。今度集めてみるかな」
「…………今はとりあえず、そのデッキをより使いこなせるようにする方がいいと思う」



 親友()と恋人(龍亞)が同じディフォーマーデッキを使う。別に構わない筈だ。構わない筈なのに……胸の奥が、ちりちりと焦げるような感覚。二人は(たぶん)出会ってもいないのに、それを知っているのは遊星だけなのに、あまりいい気分にはならない。


「(これが、嫉妬か?)」
 だとしたら恋とは、なんて心苦しく、人を情けなくするものなのだろう。小さくため息を吐く遊星は、幸か不幸か、それを怪訝そうに見つめるの視線に気付けなかった。その時そんな遊星の恋愛事情など知る由もないクロウが、流れを変える一言を発する。



「ところでよ、町内大会って何のことだ」
「あぁ。規模はちっさかったんだけどな。この間あったんだよ。デュエル大会。で、それに俺と遊星が参加したの。すっげー好調に、順調に勝ち進んだんだぜー……決勝で遊星きゅんに当たるまでは」
「あぁ、だからリベンジ」
も、デュエルの腕自体は悪くないからな」

 が参加しなければ龍亞を呼べたんだが……という個人的な感情は隅に置いて、遊星も話に加わる。
 満足組には負け続けているだが、その他の人にも負けているかというとそうではない。むしろだいたい勝ってる。勝率でいえば8割はくだらない。だが満足組には4割以下。三回勝負なら必ず一回は勝てるが、一本勝負ならまず勝てたことがない。それはそれだけ満足組、遊星達の実力が半端ないというのもあるのだろうが……理由は、それだけではない。



「……その大会でも、そのデッキだったのか?」
「ん? おう。まぁディフォーマーは入れてなかったけど。ってあぁ! もうこんな時間じゃねーか早く行かねーとショタ達の下校が終わっちまう!!」
「……。もう一度俺とデュエルしろ」
「え、どうしたのジャッキュン。Σハッ、まさかおかわりを要求する気か! 俺一杯分しか奢れねーよ!?」
「ならばお前が勝てば、奢るのを無しにしてもいい」
「えぇええどういう風の吹きまわし、てか風邪でも引いたのかジャック!? お前がそんなこと言うなんて、こんなところでぱたぱたコートの裾はためかせてる場合じゃねーぞとっとと帰って風邪薬飲んで寝ろ!!」
「貴様は俺をどんな奴だと思っている!! いいから俺とデュエルしろ! 貴様の……あのデッキでな!!」




 あのデッキ。その単語に彼等を取り巻いていた空気が一瞬にして変化し、騒がしかったがぴたりと大人しくなる。そして彼は無言のまま、先程の言葉が聞き間違いではないか確認を取る様にジャックを見上げる。




「あのデッキって、あのデッキ?」
「まさか持ってきていない、とは言わんだろうな」
「持ってる。いつだって手放すことはねーし……でも俺これからショタ達の下校を」



 高身長を最大限に利用した、威厳たっぷりに見下ろすジャックの無言の重圧に、は観念するように両手を上げる。



「分かった。デュエルします」
「それでいい。とっとと始めるぞ」
「あーもぉ、分かってるってー」
 そう、セットされたデッキを入れ替え、一回目と同じように対峙するに、ジャックは先程よりずっと、ずっと真剣な目で語る。


「俺の前で、手を抜くことは許さん」
「……俺は、何時だって全力だよ?」

「今度は遊星かよ。俺これからデュエルなんだけど」
 振り向いたの目に映る満足組の面々は、ジャック同様先程とは比べ物にならない程真剣に見つめていて……その中でも一番マジの顔で、遊星は短く、必要な言葉だけを告げる。



「絶対に、負けるな」
「………………はぁ」
 やれやれ、とため息を吐いてジャックへと向き直ったは……先程までの言動からは全く結びつかない程真剣でだが底の見えない表情を湛え、デュエルディスクを構えた。





「「決闘(デュエル)!!」」

 こうして、ジャックとの二度目のデュエルが始まったが―――戦局という名の流れとそれに伴う決着は、先程とは180度ひっくり返るものとなった。





「ラッシャァアアアアーー! 今日やっとの勝利ー!!」
「くっ……また、か」
 やたーやたーやったぁああラッシャラァアアアア! と喜びを隠さないと、膝を付きドンッと拳を床にぶつけているジャック。


 また(、、)、負けた。また勝てなかった(、、、、、、、、)。また『あの』デッキに、圧倒的勝利を飾らせてしまった(、、、、、、、、、、、、、、)



「じゃあジャック。約束通り、ブルーアイズマウンテンはまた次の機会にな!」
「……分かっている!」
 しゃがみ込んで確認を取るに噛みつくように吐き捨てるジャック……そんな彼等の輪に入ることなく、遊星とクロウと鬼柳は、ただ見つめるだけだ。


「……なぁ、俺等の『あの』デッキに、これで何敗(、、)したっけ?」
「言うんじゃねぇクロウ……次はこの俺が絶対負かすから」
「……少なくとも、まだ誰も勝ててはいない(、、、、、、、、、、、)



 先程遊星が言っていたように、のデッキはアトランティスや氷結界で構成された水属性がメインのデッキ。他にも色々なテーマでデッキを作ってはみるものの、対満足組との戦績は何時だって四割以下。負け続けロードをスキップ交じりに走りまくっている。


 だが、『あの』デッキを使った場合、は“変わる”。その戦績は一転して負け知らずになり、白星を並べられた勝者のロードを爆走する。それは今もなお、誰も止められていない。満足組の誰もが、『あのデッキを使った』から、一勝を奪えないままでいる。



「てか、何度も思ったし言ってるけど本当に同一人物かよ。実は『あの』デッキ以外じゃ手ぇ抜いてんじゃねーだろうな」
「どんなデッキでもは本気しか出せない。だからどちらも本当の実力なんだ」
「デッキが変わるだけで、こうも変わる奴なんて見たことねーぞ」
「……それが、の恐ろしい所だ」



 まるで蜃気楼。まるで幻影のように。の力は底が見えず明確な形、ビジョン、イメージを掴むことも、与えてくれることもない。
 満足組の面々に負け続けているのも、『あの』デッキで圧倒的強さを掲示し続けるのも、どちらも本当の彼の実力によるもので。だから一つの面だけを見て彼の力を測れば……生き馬の目を抜くように、足元から、(かれ)に勝利を食いつぶされる。

 遊星もジャックもクロウも鬼柳も、『あの』デッキを使うの強さを痛い位理解していて、だからこそ誰かが彼の相手になる時、デュエルの行く末を何も言わず見つめ続ける。彼等は根っからのデュエリストで、故に得たいのだ。なりたいのだ。『あの』デッキを使うから勝利を奪い、最初の勝者になりたいのだ。だから少しでも『あの』デッキの特徴を掴む為観察し続ける。それは酷く顕著で、ストイックで、隠そうとしたりしないからにだって伝わる。



「……あのデッキは、お姉さんから貰ったものだと言っていた」
「そうなのか? 初耳だぜ」
「お姉さんって、時々あいつの話すあのお姉さんか?」
「ああ。なりにいじってはみたらしいが、ベースは貰った時から変わっていない」
「それでずーっと勝ち続けてるってことは、相当レベルの高ぇデッキなんだな」
「それはも認めているし、むしろ自慢していたよ。だが勝ち続けられるからこそ、は俺達相手にあれを使わなくなった」




『なぁ、遊星。お前が勝ちたいのは、俺じゃないだろ』


 遊星の脳裏に、の言葉が蘇る。『あの日』……自分が『あの』デッキを使う時人に敗北し、今日こそは勝つと勇んで挑みまた敗北した後の事だ。



『実はな。たった一人だけ、このデッキに勝ってる人はいるんだ。けどその人がいくら勝っても、俺にとってこのデッキは負け知らずと同じなんだよ』
 その時点で彼とデュエルをした回数は二回。その二回とも彼の希望で二人きりで、卓上にて行った。そしてその二回目のデュエル後、初めてずっと隠していたその心と、唯一の例外が存在する事を遊星に話してくれた。敗北した事があるのに負け知らずとは矛盾する屁理屈にしか聞こえないが、彼にとってはちゃんと筋が通った理由が存在している。そしてその情報があろうとなかろうと、遊星の敗北は覆らない。


 『あの』デッキはに絶対的な勝利を齎し、遊星達に敗北を喫させる。の実力等関係無く、彼を勝者にさせてくれる。だからこそ、は……




『でも、なんか楽になったよ。……お前とデュエルして、やっと自分が選ぶべき道が見えた』

 その日を境に、『あの』デッキを滅多に使わなくなった。新しくデッキを作って、それで自分達に勝つと言い出した。いつまでもこのデッキに甘えていたくないという言葉は、きっと真実の気持ちだろう。だがその時、遊星は確かに見てしまった。否違う。感じてしまったのだ。



『また、デュエルしろよな。俺、デッキ作るの上手くねーんだよ』

 前を向き歩き始めた希望の言葉を口にしながら、その瞳に浮かんでいた、諦観を。その時浮かべていたの顔を、遊星は今でも忘れられない。自分の力で勝利を掴むと言う美しい言葉で覆った……救い様が無いほど昏く淀みきった諦観から来る決意を。表情に、いや、瞳に浮かべて“しまって”いたという事を、彼はおそらく夢にも思っていないだろう。


 そしてその言葉を口にする事で、『あの』デッキを使わないと遠回しに公言する事で……彼は遊星に、仲間達に、知らず知らずの内に伸ばしていた救いを求める手を……降ろしてしまった。その推測は、きっと間違っていない。



 だから遊星は、に絶対に勝ちたいと思うようになった。いや絶対に勝たなければいけないと思うようになった。




「クロウ、鬼柳」
「ん?」
「あ? どーした?」
「……」


 遊星は仲間達に、『あの日』と交わしたやり取りを、詳しく話してはいない。そうしないのはけして絆を蔑ろにしている訳では無くて……彼の中で、既に解決策が見えているから。



「次は……俺が戦うからな」

 その次が、いつ訪れるかは分からないけど。たとえその戦いへの執着が、の誤解を更に深めることになると分かっていても。



 勝ちたい。勝ちたい。勝たなければ、いけないのだから。




「……だがその為には、まず俺達に対してもあいつがもう一つのデッキで勝率を伸ばせるようにならないといけない」
「……そうすりゃ、あいつが自主的にあのデッキを出すようになると?」
「それが一番の、近道だと思っている」
「……へっ。仕方ねぇな。次のリベンジを譲るつもりは毛頭ねーが、そういうことなら協力してやらねーとな」
「そうだな。ビシビシしごいて、とっとと強くなってもらうか」
「ああ」「おう」
「なになにー? お前等どしたのー? どっかにいいショ、Σハッ! そうだショタの、あぁあああもうとっくに下校時間過ぎちまったよー!!」


 三人の間にピリッと走った空気が、同じ目的という目指すべき方向へと集束した時。その様な空気等微塵も気にすることなくがこちらへとやってきた。ショタに会えなかった事にガッデム! と膝を付く彼に、クロウと鬼柳が悪い笑みを持って歩み寄る。



「あれ。何なの二人ともその顔は。言っとくけど俺もう今日はデュエルの気分はターンエンドよ?」
「おい! お前の前のデッキ見せろ」
「え、前? 前のって、これじゃない方?」
「そうだ。デッキ編集手伝ってやるよ。おらとっとと始めるぞ」
「え? え? これって何事? え、遊星ちょっと説明プリーズ」
。お前のデッキにはディフォーマーは合わない。今はとにかく長所である水属性を伸ばすべきだ」
「色々なカードを使ってみるのはいいことだと思うんです! それに変形する機械族とかまさにショタと巡り合えそうな素敵ないだぁっ!!」
「くだらねぇこと言ってねーでさっさと準備しやがれ」
「ちょっ、くだらないって何だよ俺にとってはすっげー大事な」
「はいはい分かったから始めっぞ」
「分かってねぇ〜! ていうか俺も訳分からねぇ〜!!」


 なんだかスイッチが入ったらしいクロウと鬼柳によって連れて行かれるを見ながら、


「ジャックにも、協力して貰おう」

 そして話し終わったら、のデッキからディフォーマーを外す作業に取り掛かろう。……との『あの』デッキの事半分、そして龍亞の事をもう半分考えながら、遊星はジャックの元へと歩を進めるのだった。


―END―
遊星先生の小さなじゅえらし〜と、の謎に包まれたデュエル事情。
作中にも書いてる通りの実力は一つの観点からじゃ測れない。どんなデッキでデュエルしても全部本当で本気なのに、まるで全部嘘にも見える。それが。一つ確実に言えるのは、彼は絶対に弱くない。だけどその事で、彼は遊星(達)との間に、言葉を選ばずに言うなら『壁』を作ってしまっているらしい。遊星が勝ちたいと願うのは、その辺の事情も併せ持っている。恋愛感情? それだけは天地が引っくり返っても地球が爆発してもあり得ないよ。

今回あえて『あの』デッキと表現した彼のパートナーデッキの詳細はまた今度。ただ彼のデッキはどんなデッキでも基本は水属性で構成されている。そして『あの』デッキというのは前回のおでん話の時にちらっと出たタブー扱いになってるショタデッキではありません。


ここまで読んでくださりありがとうございました!!

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