5月5日は、
「ショタの日! あ、いけね。ロリの日でもあるぞ!」
……子供の日だ。
家庭教師とハッピーラブレッスン☆
それは、もういくつ寝るとゴールデンウィーク? と、GWまで後一歩となった4月の末日。
「エックスキュ〜ズミ〜! ハロー、サティスファクションズ!」
「サティスファクションズじゃねぇ! チームサティスファクションだ!」
意気揚々と部屋に入って来たに、チームリーダーである鬼柳京介はツッコミを入れた。その後から遊星がため息を吐きながら入ってくる。
ここは遊星達の通う大学の中に設けられた、部室の一つ。部屋の中には鬼柳の他にもクロウとジャックというチームサティスファクションのメンバーが全員集合している。
「機嫌いいな。今日の昼飯の牛丼、肉多めだったのか?」
「いや、今日は牛丼じゃなくてジャンボラーメンの大盛り食べたけど」
「……窓の外に小学生の団体でも見えたか」
「何!? 何時? 何時そんなドキドキグループを見たんだよそこんとこ詳しく教えあぐぅ!」
苦笑しながらに声を掛けるクロウと、缶コーヒーを飲みながらリラックス状態のジャックに何時ものように返答するは、何時ものように最後まで言えることなく遊星の無言のしばきを受けて沈没した。
「ジャック。頼むからの前でそれを言うのは控えてくれ」
「そーだぞジャック。正直オレもそーじゃねーかなとは思ったけど、わざわざ自分から振ってたらキリねぇんだから」
は、ここにいるチームサティスファクション全員が認めるショタコンである。ロリコンのけもあるのかもしれないが、ハッキリと言い切れるのはショタコンである。
だから彼がちょーっと調子に乗ればショタに関するソレ系の発言がポンポン飛び出してくるので、その度に遊星、またはチームサティスファ……長いので満足組とさせていただく……満足組の誰かが止めることになるのだ。特に遊星の止め方は、幼馴染というのもあってかまったく持って容赦がない。ちなみにはこうやって部室に出入りしているが満足組のメンバーではないらしい。
「遊星きゅん、痛い」
「これでも手加減はした方だ」
「で、ジャッキュン。さっきの話をもっと詳しく。そしてそのコーヒーくれ」
「誰がジャッキュンだ誰が! 人の好物を欲しがるとはがめつい奴め!」
頭を押さえながら復活したが一口〜とジャックに詰め寄るのを見ながら、遊星とクロウは重いため息を吐く。
黙って動かなければちょっとワイルド入ったエロカッコいい美男子で通るものを、あの性格と行動がすべてを台無しにしてしまっている。女子達は気さくでお近づきになりやすいと思っているのかもしれないが、二人っきりになってに一時間好きなように喋らせれば、けして色目を使おうという気にはならなくなる筈だ。
「……で? 結局何ではあんな機嫌がいいんだよ。遊星は知ってるのか?」
「……あれじゃないか?」
あれ? と訊くクロウと鬼柳に対し、あれ、と遊星はの右手に握られた白いビニール袋を指差す。ジャックとコーヒー争奪戦を繰り広げている為激しく揺れているが、一階に設置されたコンビニのロゴが確認出来た。
「おーいー。機嫌がいいのってその袋かー」
「お! 鋭いなクロウ! 自販機にはお預けプレイ(→売切)喰らわされたんだけどな、いいもの見つけたんだよ!」
どうやらがジャックのコーヒーをせがんでいたのはそういう理由があったらしい。一通りせがんで気が済んだのか、ジャックの上から離れたは皆の座っている畳カーペットの上に袋の中身をざざっと落とす。
「? これ、ちまきか?」
「うん。ほら、そろそろショタの日だろ?」
「子供の日だ」
「そうとも言う。で、一階のコンビニに売ってたから買っちゃったんだよな!」
ちまき、と言えば中華料理の豚肉とか筍とかを入れた主食にもなる奴もあるが、今回はお菓子のちまきである。問題発言に対する遊星のツッコミをさらっと流した後、それからこれも、と何処からか取り出したタッパーを開く。中にはこれまた時期的にぴったりの柏餅が入っていた。
「こっちの柏餅は俺のお手製だぞー」
「……柏餅なのに葉っぱがねぇぞ」
「気にするな。調達出来なかったんだ」
葉っぱの代わりにラップで包まれている柏餅は、季節を感じるには少々物足りない。だがまぁそこは外見より中身。丁度小腹もすき始めた頃だったので、皆次々に柏餅を手に取った。
「うーし。じゃあ俺はちまきちゃんを頂こうかな〜♪」
「それ三本あんじゃねぇか。一人で全部食うのか?」
「んーどうしよっか。じゃあ一本は遊星にやるよ」
「俺に?」
「他の奴にやってもいいからさ。俺は幸せは両手までって方が合ってるんだよね」
でもきっと好きだろうなぁと思うのですよね。
ニマニマ、と悪い笑みを浮かべつつ遊星の方にちまきを一本丁重に渡した後、自分もまたちまきの葉を丁寧に……丁寧を通り越して、とっても慎重に、ちまきが傷つかない様にでもする様に、ゆっくりゆっくり葉を剥がしていく。まるで子供が宝箱の中身を覗き見ながら開けている様な、真剣かつキラキラした目でおそるおそる葉を捲っていっている。
「なんだ。そんなゆっくり取らず一気に行けばいいだろう」
「駄目だ。こいつはちゃんと丁寧に扱ってやらないと……傷でも付けちゃったらどうする!」
「どうせ食うんだからちょっとくらい気にすんなよ。オレが代わりに取ってやろうか」
「えぇええクロウってばなんてアバウトかつワイルドなこと……俺今すっごく楽しいんだから取っちゃ嫌」
「なんだぁ? 変な奴だなぁ。お前そんなちまきが好きだったのか?」
「いやぁ、味はそうでもないよ。俺にとって重要なのは口に銜えるまでだから」
「? それってどういう」
もきゅもきゅ。ぱくぱく。
甘党の彼にしては丁度いい具合の甘さに、結構美味いと思いつつ柏餅を貪っていた満足組の面々は、
「ほらぁ、ちまきってさ。じっと見てるとショタのズギューンに似てるだろ?」
ん゛ぐぅ!?
満面の笑みで紡がれたのとんでもない卑猥な発言に、仲良く喉を詰まらせた。ちなみに銃声という名のピー音で隠れたの単語が知りたい方は、彼のこれまでの言動とちまきの形を頭に入れて考えて……否。やっぱり考えない方がいいと思う。
ドンドンと胸を叩いていたり目の前の自分の飲み物をぐぉっと一気飲みしている満足組の面々を尻目に、漸く綺麗に皮葉を……というか、あの発言の後よく見れば、ちまきを持っている手つきも妙にナニカを意識しているようにさえ見える……取り除いたは、
「じゃ、いっただっきまーすvv」
とろける様な甘い笑みを浮かべて、両手でしっかり持ったちまきをあーんと大きく開いた口に……
ズゴァ!!
「はげぶっ!?」
口に入れる前に、お隣同士だったジャックとクロウの遠慮ない一撃をくらわされたは、そのまま綺麗にひっくり返る。そして、
「っ、っ、お前は、人が口に物を入れている時に何という事を」
「え、何? 俺なんか変なこと言った?」
「だぁー! もうお前はちまきを食うな! オレ等の前でちまき食うの禁止!!」
「えぇええええ何それ! あ、ちまき! 俺のちまきを返せー!」
「あんなこと言った後でお前にちまきを食わせられるかぁあ!」
「ちまきー!!」
どうやら一撃喰らわせるまで結構大変だったらしく荒い息を吐くジャックと、ひっくり返ったの手から綺麗に剥かれたちまきを強奪するクロウと、奪われた愛しのちまきを取り戻すべくクロウへと向かっていくで、部室の中はドスンバタンと一気に騒がしくなった。
「はぁ……ったく、には困ったもんだぜ」
喉の詰まりから漸く解放された鬼柳は、残りの柏餅が入っているタッパーをクロウ達から避難させつつため息を吐く。確かにどう考えても、さっきのはが悪い。素直とはいえ、食事時に言ってもよい発言ではなかったのだから。
「お前も苦労してたんだなぁ遊星」
遊星とは幼馴染だから、一緒にいたならまずの問題行動や発言のフォローやツッコミを真っ先に負わなければいけなかっただろう。寛大の塊のような男が彼に対してあれ程までに容赦ないしばきをしていることからも、それがどれだけ気の重くなる事かを考えつつ、鬼柳は遊星へと同情の声を掛ける。
「……」
「? 遊星?」
だが、肝心の遊星は鬼柳の声に反応しない。先程に渡されたちまきを、じーーーーーっと見つめて無言を貫いている。
「(まさかアイツ、コウイウ意味を込めて俺にちまきを渡してきたのか。好きだと思うってコウイウ意味か)」
ふーん。ふーん。
内心に対する静かな怒りの炎を広げながら、ふと、遊星はまったく別の事を考える。いや正確に言えば、繋がりがある様な、ない様な。
「(……いや、でも龍亞はショタじゃないだろう。確かに身長はまだ小さいが……もう中学生だし……いやまだ小さいけど……)」
あれ。ひょっとして、まだ下の方も……色々悶々と考えている遊星の脳内では、何だか龍亞がベッドへと押し倒されてズボンを剥かれ始めた。
「(え? いやちょっと待て。何で俺はこんなことを考えている?)」
ふと我に返り自問自答してしまう遊星だが、脳内の方はまだ我に返っていないらしく懸命にパンツを握っている龍亞の手を剥がそうとしている自分のっぽい手があって、
『や、せ、せんせ、やめて……っ』
「おれのちまきー!」
「こら乗るな重てぇ、あ!」
そこで、予想外の攻撃を見せたによって、クロウの手からちまきがぽーんと離れ、綺麗に遊星の手へと当たる。反射的にそれを掴んでしまった遊星は、
『ゃめ、……ぁあ、み、みないでよぉ』
丁度いいタイミングで脳内にてパンツもずり下ろされてしまった、涙目の龍亞の大切な場所に……傷一つなく葉を剥かれた白いちまきが、綺麗に、ぴょこんとフィットした。
「……っ!」
ぐぁあ、と遊星の頬へ熱が集まり、トマトのように真っ赤になる。突然の遊星の変貌に、満足組のメンバーは不思議そうに遊星? と声を掛ける。
「よし遊星そこを動くなよ! 俺の愛しいちまきー!」
「っ!」
満足組ではないのチャンスといわんばかりの声に、ハッと遊星は我に返り、そして同時に自分がこんなことを考えてしまった元凶を思い出す。
「……。覚悟しろ」
「へ?」
まだ熱の引かない紅い顔のまま、だが目はもう気の弱い者なら気絶出来そうなほど殺気で据わったものへと変えた遊星は、
ぱく……ぶちぃ!
「いやーーー!!!」
が綺麗に剥いたちまきを優しく愛でるように口に含んだと思ったら……そのまま、バーベキューの肉を豪快に頂くようにワイルドに噛みちぎった。
「ひ、ひどい。遊星ひどい。俺がどれだけ愛と熱を込めてその皮を剥いだと思ってんだ」
「お前の想いは確かに頂いた」
「誤解するようなこと言うんじゃねーよ!」
「「お前(貴様)が言うなお前(貴様)が!!」」
ジャックとクロウにしばかれながら、しくしく、よよよとでかい図体を小さく捩り涙を浮かべるに対する遊星の顔はもう赤などどこにも見えず冷蔵庫並みに涼しい。そのまま先程に貰ったちまきをむきむきと剥いて、こちらにもかぶり付く。また響くの悲鳴。
「……一気食い」
「あ! あー何それ! 二本食いなんて何そんな羨ましい食い方してんの俺にも一本寄こあいたぁ!」
「遊星! 貴様もの前で言っているではないか!」
「ていうか遊星が冗談を言ったんだよなこれ。しかもかなりに合わせた下ネタ」
「! ……違う。そんなつもりじゃない」
「遊星きゅん……素直になれや。昔からちゃんと指摘してやってんだろお前はショタコうぉおお!?」
「自分の性癖を俺のものにすり替えるなと何度言わせる気だ!」
「お前だって何度俺にドライバー投げれば気が済むんだよ地味に怖いんだぞこれ!」
ギャーギャー、ドドドド、アンギャー!
のせいでヒートアップしてしまった遊星が乱入したことにより、ますます部室の中は騒がしくなる。の下ネタにクロウの伝説の右とジャックのキングチョップと遊星のプラスマイナスドライバーが繰り出されるのを観戦しながら、
「おーいお前ら、あんま部室を壊すなよ」
下手に乱入するとの盾にされそうなので、鬼柳は二、三歩離れたところで残りの柏餅を食べながら、他人事のように注意するのだった。
結局この後は自腹で買ったにも関わらず、ちまきを食べることは出来なかったということだ。
そしてこのやり取りから次の日にあった授業にて、遊星は龍亞の顔を見るのに少々苦労したということだ。
―END―
TFでは鬼柳は和を連想するのは嫌いらしいが気にしない。鬼柳の性格違う気もするけど、まぁ、気にしない(気にしろよ)
この話は時期的に遊星先生と龍亞が恋人になる前ということにしています。恋人になった後でもよかったのですが、それだと先生、もっとリアルな妄想しそうだk(ドライバーが飛んできて強制ry あんな妄想を繰り広げても少々で済むところに、遊星先生のポーカーフェイスの完成度が窺い知れます。
そしてやっと普段のが出せました! わーい楽しいな! この調子で遊星先生だけと龍亞を翻弄していってほしいです!
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!!
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