十翔でやったネタを遊龍亞でもやってみよー企画なので、本文を出来る限りパクっていってます。

今回の題材は『奥様は眼鏡っ子』なので、

旦那=出稼ぎに出る人
奥さん=お家で色々家事やる人

というイメージで表記してます。攻受は変わらないよ! 遊星が奥さんでも遊龍亞だよ! 一応子供(役)も出てるよ!


小説というより、架空シミュレーションを見ている感覚で読んでもらえたら嬉しいです。


「奥様は眼鏡っ子 1」 遊星が旦那で、龍亞が奥さん奥しゃんの場合へ→

「奥様は眼鏡っ子 1」 龍亞が旦那で、遊星が奥さんの場合へ→
























 柔らかな日溜まりが窓から差し込んでくるある日の朝。ベッドの中で春眠を貪っている遊星は、少し瞼を開けたと思ったらまたすぐに閉じてしまう。どっちかっていうと猫属性だから、朝は眠っていたいタイプなのだ。


「だぅ〜……あ、だうだういっちゃダメだったの……え、えっと、おきるの〜、パ、じゃなくて、とーさーん、おきてー」

 よいしょっと。と布団ではなくベッドの上に登り遊星の上へと乗った物体が逆に余計眠たくなるような声で起こしに掛かって来る。ちなみにこの物体、髪型は黒地に黄緑のメッシュ入りで左右それぞれ先端に丸みのある大小の棘が二本ずつ跳ねている。


「とーさーん。とーさーん」

 起こす為の“とーさん”の呼びかけは、スピードでいうなら童謡「ぞうさん」、リズムなら羊が一匹羊が二匹の様に規則正しい。ゆっさゆっさ、ペチペチと呼びかけ以外にも努力はしているのだが、こんな呼びかけ付きでは起きる方が難しい。遊星もその例に漏れず、また深い夢の中へと旅立ってしまう。




 だがその旅は突然、強制的に終わらされる。しかしそれは上に乗っている物体……否、幼女によってではない。





――ドゥオンガラガッシャーーーン!!




 まるで戦地のど真ん中でいきなり戦車がひっくり返った様な、まず平和な朝のひとときには聞かないような爆発音が響き渡った為である。




「? ……!?」
「あぅ〜」
 体の上に乗った物体ごと吹き飛ばす勢いで勢いよく布団を上げて起き上がる遊星。体勢を崩した幼女はそのまま後ろへ一回転し、尻から下へ落っこちた。


「あ、とーさんがおきたの! おはよーなの!」
「あ、あぁ。おはよう、い「えぅ〜」……ゆあ。今日はちゃんと早起き出来たんだな」
 少しの間えぅえぅと打ちつけた尻を撫でた後、すぐに復活した“ゆあ”と呼ばれた幼女は、起き上った遊星によしよしされて嬉しそうな笑顔を浮かべている。



「とーさんはねぼすけなの。ゆあがおこさなくてもおきてほしーの」
「あぁ、すまない」
「ママ……マミィはすごいの。とーさんをいっぱつでおこしちゃったの〜」


 余談だがゆあはまぎれもなく遊星とその妻の子供であqwせdrftgyふじこlp;(異常な電波が発生しました)。



「……そう言えば、さっきの爆発音はなんだったんだ」
「マミィがごはんをつくってるの〜v」

 ゆあの満面の笑みの後、扉の向こうからボカーンドカーンバシーンパリンパリンパリン、と勢いのいい爆発音が聞こえてくる。遊星の顔が、知人が見なくても丸分かりなほどに凍りついた。



「な、なんで母さんがご飯を作ってるんだ」
「さいきんとーさんががんばってるからちょっとでもらくさせてあげよーっていってたのよ〜ぅ」

 だからゆあもいっしょにはやおきしたのよぅ! と誇らしげに胸を張ると、遊星の纏う空気がとっても柔らかくなる。



「……そうか」
「そうなのよ〜ぅ」
「とりあえず、お前がここにいてくれて助かった」


 そうでなかったら状況を理解出来ないまま、驚きを処理出来ないまま音の発生源へと向かってしまっていたに違いない。それは遊星にとっても……彼の妻にとっても、いいことでは、けしてない筈だから。



「ゆあ。ちょっと頼んでもいいか」
「な〜に?」

 ゆあに何か頼みごとをした後、遊星はドアを開け、そのままリビングへと足を運ぶ。予想通り……ある意味予想を超えている……ポルターガイストでも起こったような惨劇の現場の真ん中に膝を付いている、愛しい存在の後ろ姿を見つけた。



「おはよう、龍亞」
「ぴぇ! ゆ、遊星!? 起きちゃったの!?」

 優しい遊星の朝の挨拶に、声を掛けられたポニーテール奥しゃん……龍亞が弾かれたように真っ青な顔で振り返る。だぶだぶのエプロン……良く見ればいつも遊星が使っているものだ……とその下の服、というか髪も顔もあらゆる所が、卵の黄味とか小麦粉とか汁とか豆腐の欠片とかこげとかで汚れまくっている。ぴぇって、と内心噴きながらも、遊星は、あの、あの、と慌てている龍亞の元にしゃがみ込む。



「こ、これは、その……ご、ごめんね。すぐに、綺麗にするからっ」
「ご飯を、作ってくれたのか?」
「つ……作ろうとしたら、上手くいかなくて……こ、こんなことに、なっちゃって」


 ご飯自体は遊星が昨日の晩炊飯器をセットしていたので、おかずに卵焼きとお味噌汁を作ろうとした。のはよかったのだが。


 卵は割ったらからが入りまくったりちょっと目を離したすきに黒こげになったりお味噌汁はお味噌汁で豆腐が上手く切れなかったりお味噌の量が分からずうっかり火元に落として焦がしたり……そして卵焼きは無理だホットケーキを作ろうと小麦粉を取り出したらこけてひっくり返って床が白くなったり一緒に机の上に出してた皿が落ちて割れちゃったりついでに爆発までしちゃったりと、話だけ聞けば、お前はネタの宝庫か塊かと言いたくなるようなことが次々発生し、この惨劇になっちゃったのである。



「ご、ごめんね。オレ、遊星に少しでも楽させたいって思ったのに、なんか、全部、駄目になっちゃって」
「龍亞」
 ひっく、ぐずん。情けなさ過ぎて涙が出てきちゃった龍亞を、遊星はどこまでも優しい声で名を呼び、抱きしめる。びぐっ、と震える背中をよしよしと撫でてやると、やがて、遊星の胸に大きな息が当たる感覚がする。



「俺はその気持ちだけで、充分過ぎる位嬉しい」
「っ、お、怒らないの?」
「どうして?」

 お前が俺の為を思ってしてくれたことなのに。遊星の優しい……聞き方によってはとんでもなく甘い言葉は、龍亞の心に、すーっと溶け込んでいく。なんというか、遊星は本当に龍亞に甘い。



「怒るとすれば、こんなにも傷だらけになったことか?」
「あ、それはその、包丁使ったから」

 ぐぃ、と取られた絆創膏だらけの手にキスを落としていく遊星は、ひょっとしてまだ寝ぼけているのだろうか。それともこれが彼の地なのだろうか。様々な意味で、甘い。甘ったるい。


「絆創膏を貼る時はヲロナインを塗ってからだ。……美味しそうな味がする」
「ゆ、遊星? まだ寝ぼけてんの?」
「あぁ眠い……キスをしてくれなきゃ、起きられない」
「そ、それは困る……し、仕方ないなぁ」

 ちゅ、とちょっと恥ずかしそうに、遊星の唇へとキスをする。遊星から彼へおねだりしてくるのは中々無いから、結婚して一緒に住み始めてから何年も経っているのに、未だに慣れないし、くすぐったくなる。



「あ。ちゅーなの! おはようのちゅーなの!」

 はっ。遊星の後ろから聞こえてきたゆあの声に、龍亞の顔が一気に赤くなる。



「だ、駄目だろゆあ! こういう時はおててでおめめを隠しなさい!」
「ちゅーしてるのみちゃだめなの?」
「駄目って訳じゃないが、ちゅーしている事を大きな声で教えない方がいい。ありがとう、持ってきてくれたんだな」
「もってきたの〜」

 手に持っている予備のエプロンを受け取ると、慣れた手つきでしゅるしゅると身に纏い、きゅっと綺麗な蝶結び。なんともまぁ、無駄はないが、無駄にカッコいい動作である。


「あとね、ぞうきんももってきたのよ」
「ゆあは気がきくな。今は床に置いといて、後で母さんと一緒に掃除をしてくれ。それと掃除機を持ってきてくれるか」
「わかったのよ」
「龍亞。そこの紙袋を取ってくれ。割れた食器を片づけよう」
「ぁ、うん!」



 とまぁ、この後割れた皿と小麦粉だけは先に綺麗に片づけて、遊星による朝ご飯の時間となった。



「とーさんのおみそしるおいしいの〜v」
「当たり前だろ。だって父さんだからな!」

 親子というより、年の近い兄妹のようなやり取りに、作り直した卵焼きを口に運んでいた遊星は、二人には見えない様小さく苦笑したのであった。






「じゃあ、行ってくる。後始末は頼んだぞ」
「うん。ちゃんと綺麗にしておくって」
 玄関にて、スーツ姿の遊星に龍亞はえへん、と胸を張る。内容を考えるとまったく胸を張れるようなことではないが、でもそれが逆に龍亞らしく、愛おしい存在として遊星の目には映し出される。


「じゃ、遊星。行ってらっしゃい」
「あぁ」
「……? 遊星?」

 あぁ、と言いつつその場を動かない遊星に、龍亞は不思議そうに首を傾げる。がすぐに、あそっか、と理由に思い至る。


「行ってらっしゃい!」
 ちゅぅ、とほっぺに軽くキスをする。するといきなり、腰を遊星に強く抱き寄せられる。



「……ん!」
 重なる唇。開かされる歯。口腔を行き交い絡まりあう熱い舌。間違ってもこんな朝出かけるときにするものではない、ディープなキス。


「……は、ぁ」
 解放された時にはもう自分の足で立てなくなってしまい、その場にペタンと座り込んでしまった龍亞の顔は赤く染まりきり、目もトロンとなっている。口の端から流れる唾液を指ですくわれ入れられながら、視線を合わすようしゃがんだ遊星の満足げな顔を眺める事しか出来ない。



「い……いきなり何するの」
 息も絶え絶えな龍亞に遊星は、悪びれる様子もなく口元に笑みを浮かべる。


「行ってきますのキス、俺からもするものだろう?」

 そして視線を龍亞の後ろへと動かし、



「ゆあ。行ってくる」
「え、ゆあ? 今の見て」
「みてないの〜」

 先程マミィに言われた通り、手でおめめを隠しているゆあに、もう見ていいぞ、と遊星の声が掛かる。手を外したゆあは、とことこと二人の元へと駆けより、


「ゆあもいってらっしゃいのちゅーするの! いってきますのちゅー!」
「え、だ、駄目だよゆあ。ちゅーならオレがしたげるから」
「ぷ? いくのはとーさんで、ちゅーはマミィなの?」
「そうだな。この場合は父さんがお前にちゅーだな」
「で、でも」
「ゆあには悪いが、母さんのちゅーは父さんだけのものだからな」


 そう言って遊星は、ゆあの前髪をどかして顔を近づけ、
 END。
 って、ちょっと待ってよアニキ。ここでENDマーク出さないでよ。話的におかしいよ。
 駄目。い……ゆあに他の男がちゅーするのなんて認めません。許しません。


「「……」」
「ぷ? どうしたの?」
「いや、その……」

 顔を近づけようとしてそのまま固まり、言葉を濁してしまう遊星に、ゆあは、えぅ〜? と心配そうな顔になってしまう。すると、


「父さんはもう行かなきゃいけないからさ。帰って来た時に、おかえりのちゅーをしてあげなよ」
「! そうだな。その時に、ただいまのちゅーもしよう」
「ぷ〜v わかったの。いってらっしゃいなの〜」

 暫く考えていた龍亞によるナイスなフォローにて、なんとかこの場を乗り越えた遊星は、行ってくる、とゆあの頭をよしよしした後出かけて行った。パタン、と閉まったドアに、力が抜けたように龍亞は息を吐く。



「マミィ?」
「ん? ぁー、なんでもないよ。さてと、後片づけしよっか」
「おそうじなの〜」

 ぞうきんはもっていったの〜v とリビングの方へと歩いていくゆあを見ながら、龍亞もよっこいしょ、と立ち上がる。そして、



「……」
 そっと、まだキスの余韻が残る口元へと指を当てて、


「……えへへ」
 赤味を増した顔に、綻ぶ蕾が花開かせたように、嬉しそうな笑みを浮かべたのであった。 




 何年経っても、初めの気持ち、初心忘れる事なかれ。
 貴方達もまた……立派なバカップル。


―END―
龍亞が遊星の為に苦手なお料理を頑張る。文章だけで聞けばとても可愛らしいけれど、実際の光景を見たら横から手を出したくなるに1000DP。そして最終的には彼自身が美味しそうな料理になっちゃうに2140DP。下世話なお話です。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!!

「奥様は眼鏡っ子 1」 龍亞が旦那で、遊星が奥さんの場合へ→

ボツ題材「奥様は眼鏡っ子deバカップルに10のお題D「割り込む隙も無い」」 遊星が旦那で、龍亞が奥しゃんの場合へ→


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 柔らかな日溜まりが窓から差し込んでくるある日の朝。ベッドの中で春眠を貪っている龍亞は、少し瞼を開けたと思ったらまたすぐに閉じてしまう。早起きは苦手なのだ。



「あさなのよ〜ぅ、おきるの〜、マミ、じゃなくて、とーさーん、おきてー」
 よいしょっと。とベッドの上に登った幼女が、とーさーん。とーさーんとまた眠気を誘う声で起こしに掛かって来る。彼の奥さんでさえ起きれないのに龍亞が起きれる筈もなく、ゴロンとベッドの中で向きを変え、すぐさままた夢の中へ。


 だがその旅は突然、強制的に終わらされる。龍亞の横で……彼の奥さんより龍亞は大きくないので、跨らなくてもベッドにスペースがあったのだ……膝を付いて揺すっていた幼女が、龍亞の体に乗った布団を剥がしてベッドの下に落とす。そして、



「えーぃ! えーい! よいしょー!」


ズデンッ


「ぐげっ」


 遠慮や手加減という感覚などない一生懸命な声と共に、先に落とした布団の上へと龍亞の体を移した。そのまま言うなら、ベッドから押し落とした。いでででと背中をさすりながら、龍亞の体がゆるゆると起き上がる。



「あ、とーさんがおきたの! おはよーなの!」
「おはよーじゃないよ! い「えぅ〜」……ゆあ。お前もうちょっと他のやり方を考えろよ!」
「ほかの? きのーのおくちとおはなふさぐのはしちゃだめって、マミィとやくそくしたのよぅ。マミィもとーさんのをふさいでおこしてるのにね」
「え、あ、うん。確かに昨日は大変だったからね。あれはもうしちゃダメ。ていうか母さんが塞いでるのは口だけで、って何言わせるのさっ」
「ぷぅん。とーさんはねぼすけなの。ゆあがおこさなくてもおきてほしーの」
「ねぇゆあ、お願いだからそのまま続けないで。オレ寂しくなるから」


 余談だがゆあはまぎれもなく龍亞とその妻の子供であqwせdrftgyふじこlp;(異常な電波が発生しました)。



「おきたらおかおをバシャバシャなの。マミィがごはんをつくってまってるの」

 ベッドから降りたゆあが満面の笑みで寝室の扉を開けると、ふわん、といい匂いが鼻へと届いてくる。どうやらリビングから扉をすべて開けているらしい。少し遠くから、トントントンと小気味いい包丁の音が聞こえてくる。ぱぁあああ、と龍亞の顔が知人が見なくても丸分かりな位明るくなった。



「きょうはめだまやきなのよ〜ぅ♪ ほうれんそうとソーセージもいためてるのよ〜ぅ♪」
「そっかぁ。じゃあゆあも一緒に手を洗うか」
「あらうのよ〜ぅ♪」

 きゃっきゃ、と嬉しそうに先に洗面所へと向かうゆあを見届けながら、龍亞は先にリビングの方へと足を運ぶ。



「起きたか、龍亞。味噌汁も出来たぞ」

 視線の先に見えた大好きな人。刻んだ葱を入れた鍋の火を止めながらこちらに振り返って微笑む彼の作った料理達が、龍亞の意識を完全に覚醒させる。



「おはよう遊星。今日もおいしそうだね」
 食卓の皿の上で光沢を放っている料理を見ながら涎を垂らしている龍亞に、彼の妻、遊星は嬉しそうな苦笑を浮かべている。同じ台詞なのに、どうしてこうも本家と意味合いが違っているのだろう。


「食べる前に、まず顔を洗ってこいよ」
「あそっか。すっごくおいしそうだったからつい。洗ってくるね」
「あぁ……龍亞」
「へ? 何」

 名を呼ばれ振り向くと、ちょん、と自分の唇に指を当てている遊星の姿。あ、と言いたい事を理解した龍亞は、ごめんごめん、と軽いキスをする。



「ぷぉ〜ぅ」
 くきゅ〜るるるるるっ。


 はっ。背後から聞こえてきた声に龍亞が勢いよく振り向くと、おめめ隠して腹の虫隠せずなゆあの姿が。


「とーさんおそいのよ。ゆあはおなかがすいたのです」
「あ、ぁーごめんな。父さんもすぐ顔洗ってくるから」

 その時龍亞が恥ずかしそうな赤い顔、遊星が少々拗ねた様な視線を向けていた事に、おめめを隠したままのゆあは絶対気づいていなかっただろう。



「ゆあ。もう外していいから、ご飯をつけてこい」
「はいなの〜」

 ご飯をつけて座りきょうもいいにおい〜と味噌汁に口をつけるゆあの言葉に、そうか、と遊星が微笑む。



「いただきま〜す」

 ワンテンポ遅れたいただきますに、今度はさっきまでの拗ねをすべて取り去った笑みを浮かべたのだった。







「じゃあそろそろ行ってくるね」
「あぁ……龍亞。ネクタイが曲がっている」

 玄関にて、靴を履いて振り向くスーツ姿の龍亞に、動くなよ、と遊星がネクタイへ手を掛ける。なんだか七五三の正装を整えているような微笑ましさだが至近距離の顔にドキドキしながら、龍亞は大人しく遊星にされるがままで見つめている。出来たぞ、と離れていく手を、思わずぎゅっと握って、



「い、行ってきますの……ちゅー」

 ぷちゅ、とおはよう同様自分から遊星の唇へとキスをする。そのまま慌てて一歩後ろへと下がり、



「ゆ、ゆあ! そろそろ行こうぜ!」
「いくのー」

 遊星の後ろで、幼稚園の制服に着替えた後またおめめを隠していたゆあは、きゃっきゃと二人の元へと走り寄る。そして、



「ゆあにも、いってらっしゃいのちゅー」
「うん。でもマミィのちゅーは父さんのだから、父さんと行ってらっしゃいのちゅーな!」

 ゆあと龍亞。ほのぼのの塊の様なオーラを溢れさせながら、ちゅっちゅーと遊星の目の前でおでこにそれぞれちゅーをした。これは本来、微笑ましい光景を見る目で眺めるものである。えぇそれはもう微笑ましい光景そのものなのである。




 が、いかんせん、独占欲というものは、時に普段の心の広さをまったく無意味にするものである。




「……龍亞」
「……? 遊星? どうしー……!?」
 遊星に呼ばれ、しゃがんでいた龍亞が立ち上がる。するといきなり、腰を遊星に強く抱き寄せられる。



「……ん!」
 重なる唇。開かされる歯。口腔を行き交い絡まりあう熱い舌。間違ってもこんな朝、今から出かける人間にするものではない、ディープなキス。


「……は、ぁ」
 解放された時には足がガクガクになってしまい、遊星の腕の中に収まった龍亞の顔は赤く染まりきり、目もトロンとなっている。口の端から流れる唾液を指ですくわれ入れられながら、視線の先に映る遊星の満足げな顔を眺める事しか出来ない。



「い……いきなり何するの」
 息も絶え絶えな龍亞に遊星は、悪びれる様子もなく口元に笑みを浮かべる。



「行ってらっしゃいのちゅーが、まだだっただろう?

 足りないなら、もっとしてやろうか」


 ……もう反論する気も起きなかった。龍亞は、残っていた最後の力で遊星の元から抜け出し突き飛ばす。



「遊星のバカ! 行くぞゆあ!」
「ぴゃぉ〜う! いってきまーす」

 ちゅーを始めたことでまた目を隠していた為いきなり引っ張られてビックリしたゆあが悲鳴を上げたが、すぐに呑気に遊星へと手を振りそのまま龍亞によってバタン! と扉が閉められる。



「とーさん? マミィとけんかはメェなのよ?」
「喧嘩じゃないの! ちょっと恥ずかしかっただけ!」

 ずかずかとゆあの手を引きながら歩く今の龍亞の顔を遊星が見たら、どの位の確率で理性が飛ぶのだろう。




「……遊星の、バカ」
 エッチ。ゆあにけして聞こえない様呟くと……そっと、まだキスの余韻が残る口元へと指を当てて。


「……オレも、バカか」
 熟したトマト色の顔に浮かぶ、にやついた唇が元に戻るには、もう少し時間がかかりそうだった。 



 何年経っても、初めの気持ち、初心忘れる事なかれ。
 貴方達もまた……立派なバカップル。


―END―
こっちの方が本家奥様眼鏡にとっても近い件について。
とても……平和ですね。(´∀`*)エフエフ

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!!

「奥様は眼鏡っ子 1」 遊星が旦那で、龍亞が奥さん奥しゃんの場合を読む→

ボツ題材「奥様は眼鏡っ子deバカップルに10のお題D「割り込む隙も無い」」 遊星が旦那で、龍亞が奥しゃんの場合へ→


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