褒めてほしかった。見てほしかった。

 ……認めて、ほしかった。




特別な人




 オレは龍可のお兄ちゃんで、龍可を守らなきゃって思ってた。うぅん、思ってる。今でもその思いは、全然変わってない。

 けど龍可は、オレが守らなくても充分強くて、特別な力も持ってて、世界を守れるシグナーで……オレには、何もなかった。


 小さいころから、周りはいつも龍可を褒めてた。龍可ちゃんは頭がいいわね。いい子ねって。オレはじっとしてられないしよく騒いでたから、静かにしなさいとか、大人しくしてなさいってよく言われたっけ。


『貴方はお兄ちゃんなんだから、もっとしっかりしなさい』
『少しは龍可ちゃんを見習ったら?』


 オレの気持ちなんて全く考えずに言われた言葉は、覚えてはいるけど、気にしてはいない。

 だってそいつらは、龍可を見てオレを見ずに言う。オレを見もしない奴等に何を言われても、深くは気にしないって決めたから。

 ……傷つかないって言ったら、嘘になるよ? でもそれを言ったところで、大人は自分達の事だと気づかない。これだから大人は駄目なんだって、思いたくもなるよね。



 龍可の事は大好きで、大切で、だからこそ疎ましい気持ちもあった。

 だけど龍可も、同じ事を考えていた。そして同時に申し訳なくも思ってたらしい。

 オレの力を必要とされてないことは、分かってた。でもオレの存在を必要としてくれたから、オレは一緒にサテライトへ向かった。

 龍可の応援をするんだって。オレに出来る事をやろうって。オレを必要としてくれた龍可の為に、頑張ろうって。


 だから……ディマクと戦いを始めても、逃げようなんて思わなかった。龍可を守るって決めたから。

 怖くないと嘘を吐いた。怖くないは、正しくもあった。ここでオレが怖くなって逃げて、後で龍可や遊星が傷つけられる方がよっぽど怖かった。


 他の誰にも、見られてなくてもいい。認められなくても、褒められなくてもいい。

 龍可が見てくれてるなら。ほんの少しでも、龍可を守れるなら、龍可の力になれるなら、それでいい。



 ………………。


 違う……本当は、違うんだろう。

 浴びたいのは、泥じゃなくて、光。どんなに小さくてもいい。龍可以外の人からの、光を浴びたい。

 突き刺すような冷たい光じゃなくて、オレを見て、認めてくれる温かい光を見たい。


 龍可じゃなくて、オレを見てほしい。褒めてほしい。認めてほしい。

 今までそんな人いなかったけど。諦めてしまえば、楽なのだけど。それでも諦めきれないオレは、バカなのだろうけど。



「龍亞。よくやったな」


 ディマクとの戦いに勝って。龍可のおかげで勝てた様な決闘だったのに。

 遊星はオレにそう言ってくれた。龍可じゃなくオレに、言葉をくれた。



「……っ」

 温かかった。嬉しかった。心地よかった。

 だから、なんだろう。


 ああ、この人なら、大丈夫だって。

 遊星なら、信じても大丈夫だって。


 その時からオレの中で、遊星が龍可と同じ位、


 特別な人に、なったんだろうな。


―END―
サイトにアップした遊龍亞作品で、アニメ設定って実は初めてではなかろうかと思った今日この頃。いつか書こうと思っていた遊←龍亞だったので、書き終えることが出来てほっとしています。
龍亞は眩しい光のような明るさを持っているからこそ、同じ位、暗い影の部分を持っているんじゃないかという妄想から捏造してみました。既出だとは思いますが遊星と会う前の龍亞の立場とか境遇を考えたら、ありえなくもないんじゃないかな、と。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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