(本来は龍亞の「……って、ちょっと待って。そういえばオレ、遊星には〜」の前に入るはずだった部分をリメーイク)







We Love Him! 遊龍亞補完






 ゾラに注意されそろそろ帰ろうかとなったとき、突然あー! と龍亞が声を上げる。またゾラが来るのではと遊星達は入口のドアに意識を張ったが、今度は現れなかった。


「忘れてた! 遊星、ちょっと来て!」
「え」
 ガバ、と突如立ち上がったと思ったら、龍亞は遊星の手を持って外へと引っ張っていく。なんだなんだと他の面々が後を追おうとすると、覗きは駄目ー! と言いながら走っていく。よく訳の分からない展開だ。


 外に出てすぐの路地裏に入ると、そのまま奥の方へと進んでいく。そしてかなり進んだところで振り向くと、はい! と何かが入った包みを差し出す。

「龍亞。これは」
「えへへ。オレから遊星に、プレゼント♪」
 今日さ、プレゼント探すついでに、バイク店にも行ったんだよ。ニコニコと満面の笑みで開けるよう促す龍亞に応え、ずしりと重い包みを丁寧に開けると、


「! これは」
「ジャジャーン! どう、どう?」

 龍亞が購入するにはちょっと値が張っているのが分かる、真新しいスパナ。いいプレゼントでしょ、と笑う龍亞に、遊星は驚きが隠せない。


「ほら、今日オレが待ち合わせしてるって言ったときさ、スパナ曲がっちゃったじゃない? だからきっと、また買わなくちゃいけないんだろうなって」
「……だが、かなり値が張っただろう?」
「そ、そんなことないよ。お、お店の人も負けてくれたし」
 確かに負けてはもらったがそれでも料金の半分以上をいよに出してもらったなんて絶対に言えない龍亞は、必死に“大丈夫だった”ということをアピールする。ここで遊星が引けば、後は自分が彼女に蜂蜜アイスを奢って綺麗に閉まる。……一回で済ませられるかは、別だ。別。


「遊星はさ。今までいっぱいいーっぱい頑張ってきて、これからもずーっと頑張っていくんだろうからさ」


『いよが一生懸命選んだんだからさ。いよの兄ちゃんも絶対喜んでくれるよ』
 これは毎年毎年、不安いっぱいにプレゼントを選んでいたと話したいよに対して龍亞が自分で言った言葉。プレゼントは、あくまで感謝の形。大事なのは、そこに詰まってる感謝の気持ち。大好きだと、いう気持ち。妹がそういう気持ちでプレゼントを考えてくれてると知って、喜ばない兄などいるものかと話す龍亞に、いよは


『じゃあ、龍亞君も、喜んでもらえるね』
 蟹さんのこと、大好きなんだもん。きっと、絶対、大丈夫だね。
 幸せそうな、嬉しそうな笑みを浮かべてそう言ったのだ。


「……オレも、ちょっと位は背中押したいなって」
 遊星とは兄弟って訳じゃないけど……そうだとしたら、凄く嬉しいから。


「だからさ、遠慮なんてしないでよ。いっぱい使ってもらいたいんだ」
「……あぁ。分かった」
 ありがとう。龍亞。大切そうにスパナを握った遊星の幸せそうな笑みに、龍亞も照れくさそうに笑う。そのまま遊星が膝を付くと、ぎう、と抱きつき、抱き返される。恋人同士、というよりは、親愛的なハグである。


 ちなみに今二人がいる路地裏内の位置。入口からはかなり遠いが、出口には結構近い位置にいる。なので道路を挟んで向かいの路地裏から仲間達がバッチリデバガメ中なのだが、その辺の会話は割愛しよう。


「(……見られてるな)」
 とっくに気づいていたのだろう。抱きしめてる間ちら、と垣間見る遊星は内心ため息を吐いてしまう。滅多にない龍亞からのプレゼントで、そのままキスの一つくらいしてしまいたいのだが、こうもじっと見られていると堪能出来ない……恥ずかしい、という気持ちが先立たないのが、遊星のいいところなのかもしれない。


 そんな時、遊星の耳に神のお告げにも似た音が聞こえた。誰も気づいていない、彼だけが聞きとめた幸運の女神の衣擦れ音。


「龍亞」
「ん? ……! ゆっ」
 ぎゅ、と抱きしめる感覚が、親愛表現から一気に欲望の色を帯びる。当事者としてはソウイウ事に疎い龍亞が分かったのだ。デバガメしている仲間達にはもう、筒抜けもいいとこである。ただし会話そのものは聞こえていないので、あくまでも雰囲気が、である。

「……今、凄くキスがしたい」
「お……オレ、も」
 もぞもぞと腕の中で身じろぐ龍亞の顎を捉え、そーっと顔を下していく。向こう側の路地にいる仲間達は、それこそ多種多様、四人四色の反応を見せるのだが、


 まだ遠目からでもギリギリ離れているというのが分かるという絶妙の間。遊星の唇が、企みが成功したという笑みを形作る。そして、

 パッパァー! ブロロロロロロ……

 遊星と龍亞、仲間達の間に走る道路を、幸運の女神が……小型の旅行バスが四台、連続で通り抜けて行った。どうやら、誰かがライディングデュエルを始めた為こちらのルートへと下りてきたらしい。

 バスがすべて通り過ぎる頃には……二人の位置は頭二つ分位離れてしまっていた。勿論、龍亞の顔が真っ赤だったことは、言うまでもない。


「み、見られてないよね? さ、さっきのバスの人とかにさ」
「……あぁ。大丈夫だ」
 見られてないさ。誰にも、な。そう龍亞の頭を撫でる遊星の目は、確信犯のように、不敵に笑っていたということだ。

―END―
遊星はこういう具体的なクレバーであってほしいです。悪っぽいと更にグー。でも公式のアレには敵わない。敵わないよカッコよすぎる。
ちなみにブログの後書きでも書きましたが、レンタルシステムは妄想だけど、本当にやってたら面白いよね!

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


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以下、いよと龍亞のどーでもいい会話部分。これはそのまま載せてますのでヤマもオチも意味もないですよ〜。




「そういえば今度の実技って、魔法使い族だっけ」
「そうなのよ。やっといよが扱いやすいデッキが使えるのよ!」
「オレ魔力カウンターとか苦手なんだよなぁ。一々数えて、覚えておかなきゃいけないのがさぁ」
「いよも最初は覚えられなかったのよ。だけど使っていればちゃんと慣れるの。だって自分のデッキだもん。龍亞君だって機械族の時は強いじゃない」
「そっか。あ゛ー早く機械族の実技来ないかなぁ。明日の魔力カウンター実技気が重いよ」
「だう〜……それじゃあ、今からデュエルする? 丁度デッキ持ってるし、いよのデッキと龍亞君のデッキを交換して変則決闘ー」
「こ、交換?」
「そうなの〜。実はいよ、機械族はあんまり使ったことがないの。動かせるのは、ママのカードだけで」
「? 何て言ったの?」
「ぷっ! き、気にしないの。だから変則決闘してみよ? それにデッキを交換してみたら、自分じゃ気がつかない弱点とかも見つけてもらえるかもしれないって」
「ふーん面白そうかも。でもオレ今日デュエルディスク持ってきてないし、お金無くなっちゃったからレンタルも出来ないよ」

 プレゼントを購入したのもあって、今日の龍亞の財布は本気で穴があいているのかと思えるほど隙間風が吹いている。しょぼん、とする龍亞に、じゃあ、といよが持っていたカバンから一枚の畳まれた紙を取り出した。

「じゃあ、決闘紙でやってみよ。卓上……ベンチ上デュエルなの! これなら、ディスクの分もいっぱい自分で考えるから、ディスクでやる時楽になるのv」
「いよ……それ、いつも持ち歩いてるの?」
「決闘者はいつ決闘を挑まれても大丈夫なようにしとけって。いよのお家のこくんなの〜v」
「? こくん?」
「こくん〜」
 こくんこくん〜とニコニコと笑いながらデュエルの誘いをするいよに、龍亞は可愛いなぁと思わざるを得ない。それは年頃の男の子としてというより、兄として、よしよししたくなる感情に近いのだろう。ちなみに正しくは、こくんではなくかくん(家訓)である。


〜* 終 *〜
いよのデュエルディスクはサイズの軽量・縮小化技術をこれでもかと注ぎ込んだものをイメージしてます。待機モードの時はコ○ラのマーチ横に倒した位かなと。色は金色と橙か白とピンク。
シンクロモンスターは勿論魔法使い関連。BMG関連もいい。オリジシンクロBMG作ってみたいですね。

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